値札のない鑑定士

星貨ギルドの鑑定卓で、クレナは宝をよく返品した。

輝く王冠へ布をかけ、古びた短剣を金庫へ移し、依頼人が急かしても石を長く眺める。売上を作らない鑑定士として、貢献度は一%だった。

交易主任マルカスは、公開査定で肩をすくめた。

「価値が分からない者ほど、危険だ偽物だと言って逃げる」

クレナは反論せず、鑑定卓の小さな札を外した。解雇された後、マルカスは彼女が保留していた王冠を目玉商品として競売へ出した。

落札の槌が鳴る前に、王冠は会場の欲望を吸い始めた。客は隣の財布へ手を伸ばし、冒険者は仲間の装備を奪い、マルカス自身も金庫の鍵を抱えて逃げようとした。

混乱の中、クレナが会場へ入った。自分の印章を返しに来ただけだった。彼女は王冠へ触れず、台座の値札を破った。

「これは王の冠ではありません。名もない徴税吏が、奪った金で作らせた欲望の器です」

由来を言い当てられた王冠は光を失った。呪具は偽られた価値を餌にする。正しい名を与えられ、ただの錆びた輪へ戻った。

正気へ戻った客たちがマルカスを睨む。彼は汗を拭き、クレナへ笑顔を作った。

「事故は防げた。特別に鑑定卓へ戻してやろう」

「危険だと言った時に信じず、危険が起きた後だけ頼る席には戻りません」

競売核が彼女の鑑定札を読み取った。呪具として退けた品、盗品として返した装備、偽物から守った信用。売らなかった品が、星貨の価値を守っていた。

会場の隅から、以前クレナに品を返された客たちが進み出た。盗まれた家宝を取り戻せた者、偽物へ全財産を払わずに済んだ者、呪具を家へ持ち帰らずに済んだ者。売上表には載らない信用が、彼女の周囲へ集まった。

クレナは鑑定卓へ、値段より先に来歴を書く欄を設けた。急ぐ取引ほど止め、責任者の命令でも危険品を競売へ出さない。

マルカスの豪華な主任章は光を失い、ただの安い鍍金だと鑑定結果まで表示された。

《資産鑑定・真正査定》

旧評価 一% → 真値 九十七%

総合貢献順位 首位:クレナ

役職更新 鑑定士 → 査定局長

交易主任マルカス → 全取引鑑定待ち