勝者だけが島を出られる

孤島で撮影される体力番組の初日、司会者が宣言した。

「三日後、この島を出られるのは勝者だけです」

参加者十人の笑顔が固まった。

一人が手を挙げる。

「敗者は?」

司会者は不敵に笑う。

「最後まで戦えば分かります」

カメラが回っていない場所で、参加者たちは緊急会議を開いた。

「本当に帰れない」

「船は一隻しか見えなかった」

「食料は三日分」

「負けた者は島へ置き去り」

「テレビ番組でそこまで?」

「配信限定なら規制が緩いかも」

「媒体で人権を判断するな」

第一競技は砂浜の旗取り。

誰も全力で走らず、互いの体力を観察した。

「今、わざと転んだ?」

「弱者を装って終盤に勝つ戦法」

「旗を取った人が最初の標的になる」

「競技で勝つほど不利なデスゲーム」

「では負ければ?」

「島から出られない」

「出口がない!」

食事でも疑いが広がる。

「魚を多く食べた人が体力を温存」

「水を分けた人は味方を作っている」

「司会者だけ弁当」

「主催者は島を出る手段を持っている」

「弁当箱から推理を飛ばしすぎ」

参加者は競技より、船の鍵を探し始めた。二人は桟橋を見張り、三人は無線機を調べ、残りは司会者を尾行した。

撮影スタッフが困る。

「皆さん、障害物競走へ」

「先に敗者の処遇を説明して」

司会者は台本を確認する。

「勝者だけが、番組用の豪華クルーザーで島を出ます」

「敗者は?」

「午後五時の定期フェリーです」

「普通に帰れる?」

「もちろん。港まで送迎バスもあります」

参加者たちは黙った。

「“島を出られるのは勝者だけ”って」

「このクルーザーで、という後半を本番ではテロップ表示します」

「口でも言ってください!」

三日後、優勝者は一人で豪華クルーザーへ乗った。

ほかの九人は、冷房と売店のある定期フェリーへ乗り込んだ。

フェリー組は売店でアイスを買い、窓越しに小さく揺れるクルーザーへ手を振った。

「勝者、大丈夫かな」

「島は出られた。昼食は出なかったらしい」

船酔いした優勝者だけが、勝利を後悔した。