午後六時の長い影

午後六時、駐車場の影は東へ伸びていた。

市議が襲われたのは庁舎裏の立体駐車場だった。監視映像には十八時ちょうど、秘書が柱の死角へ入り、四十秒後に走り去る姿が残っている。その直後、柱の裏で倒れた市議が見つかった。

映像の秘書は薄い上着を脱いで腕に掛けていた。事件当夜は冷え込み、気温は六度だった。秘書は緊張で暑かったのだと答えた。

遠くの公園から鐘が六回聞こえる。だが最後の一打に重なるように、学校の昼休みを告げる音楽もかすかに流れていた。警察は別の日の音が混線したのだろうと考えた。

秘書には十八時から議会委員会へ出席した記録があった。ただし会議室のカメラに映ったのは十八時三分からで、駐車場から走れば間に合う距離だった。市議との対立もあり、疑いは濃かった。

市議の鞄からは、秘書を解雇する内容の文書も見つかった。運転手は、二人が駐車場で口論していたと証言した。疑いは自然に秘書へ集まったが、運転手が見たという時刻も「夕方」としか書かれていない。映像の数字が、曖昧な証言まで十八時へ揃えてしまっていた。

私は柱の根元に引かれた白線と、秘書の影の長さを測った。画面の影は身長の二倍以上あり、東へ伸びている。庁舎の西側にある駐車場で、冬の十八時にそんな影はできない。日没後だからだ。

映像の時刻表示は、カメラ本体ではなく管理サーバーが後から重ねている。保守会社の記録を調べると、事件の一週間前、サーバーの時刻が六時間進んだまま点検を終えていた。

鐘は六回ではなかった。正午の十二回のうち、前半六回が映像ファイルの切り出しで落ちていた。学校の音楽も、薄い上着も、昼なら説明がつく。

市議が襲われたのは正午だった。秘書はその時刻、公開の本会議で演壇に立っている。映像の人物は、秘書の上着と鞄を借りた別人だった。

私は市議の運転手へ目を向けた。昼休みだけ所在がなく、秘書のロッカーへ入れる合鍵も持っていた。彼の靴底には、白線と同じ塗料が付いていた。

午後六時、駐車場の影は東へ伸びていた――その一文が、事件の嘘だった。

画面が示した十八時は正午であり、長い影は犯人の痕跡ではなく、時刻そのものの偽証だった。