召喚陣の外で待つ三人

召喚士候補のカンナは、昇級試験で何も呼べなかった。

銀粉で描いた陣は光った。契約名も正しく唱えた。だが現れたのは一枚の黒い羽だけで、試験官は「契約不成立」と告げた。

黒い小鳥は、遠征中にカンナの荷袋へ何度も木の実を落としていた。契約前なのに三人は既に『四人目の斥候』と呼び、餌代を共同費へ入れていた。その期待を裏切ったことのほうが、不合格印より痛かった。

試験官たちは次の受験者を呼び、陣を消すよう急かした。カンナは三人が戻る理由などないと思い、黒い羽を誰にも見つからないよう袖へ隠した。

合格すれば正式にパーティーへ入れる約束だった。

剣士アルドレイは試験場の出口へ、聖騎士バシルは受付へ、魔弓手チェルカは雨の中へ走った。カンナは消えかけた陣の中央で、一人になった。

仮加入はここまで。幼い頃から、結果を出せなければ居場所が消えるのが当然だった。

彼女は銀粉を掃き集め、貸与された外套を畳む。

「三か月、お世話になりました」

出口から戻ったアルドレイは、腰の短剣を外套の上へ置いた。

「昨日、鞘に契約印を描いてくれただろ。効き目を確かめるまで返さない」

受付から来たバシルは、仮加入証の上に自分の署名を追加した。

「正式登録には試験合格か、現役二名の保証が要る。二人目はもうすぐ戻る」

雨の中からチェルカが現れた。腕には、ずぶ濡れの黒い小鳥が抱かれている。試験場から逃げた契約獣だった。

「屋根で震えてた。呼ばれなかったんじゃなくて、人が多くて降りられなかったみたい」

小鳥はカンナの肩へ飛び、黒い羽を一枚落とした。

「でも、試験は不合格です」

チェルカは保証欄へ濡れた指で署名する。

「だから今日は仲間三人で迎えに来た」

バシルは受付の長椅子に四人分の場所を取り、アルドレイは出口の扉を閉めた。雨脚が弱まるまで出発しないつもりだ。

受付札には、契約獣の餌代まで共同経費として追記された。

カンナが契約獣へ名前を与えると、陣の残り火が一度だけ光った。

合格の鐘は鳴らなかった。それでも仮加入証の「仮」の文字だけが、三人の署名で見えなくなっていた。