同じ学校に行けない

奥津美冬の娘は、入学前検査で八百九十一点を取った。

高信用児童だけが通う中央校への推薦が届き、美冬は泣いて喜んだ。自分は四百点台で、清掃の仕事しか選べなかった。娘には、点のために頭を下げ続ける人生をさせたくなかった。

だが娘は推薦書を机に置いたまま、幼なじみと同じ地区校へ行きたいと言った。

幼なじみの家庭は百点台だった。父親の失職、母親の医療費滞納、集合住宅の騒音違反。子ども本人に違反がなくても、家族点は制服の色を決めた。

「中央校なら図書館も実験室もあるのよ」

「でも、あの子は一人になる」

美冬は、低信用者との過度な交友が娘の点を下げると説明した。娘は黙ってうなずいた。

その翌週から、娘の点が少しずつ落ち始めた。給食を幼なじみに分け、禁止区域の公園で遊び、低得点家庭の宿題を手伝った。推薦基準まであと十点という日、美冬は娘の端末を取り上げた。

「あなたのために言ってるの!」

娘は泣きながら答えた。

「点の高い私だけ助かるのは、私のためじゃない」

その言葉は、美冬が長いあいだ見ないふりをしてきたものを突いた。自分も清掃現場で、さらに点の低い同僚と話すのを避けていた。誰かを置いていけば、自分だけは上へ行けると信じたかった。

推薦承諾の期限日、美冬は中央校のボタンを押さなかった。家族の教育選択が非効率と判定され、美冬自身の点も下がった。職場では責任区画から外され、給料も減った。

地区校の入学式には、古い椅子と傷だらけの床しかなかった。それでも娘は幼なじみと並び、同じ色の名札を胸につけていた。

数年後、中央校の児童数は減り、地区校には高得点家庭からも転入者が来るようになった。娘たちが始めた共同学習会が評判になったからだ。

美冬の点は元に戻らなかった。だが清掃中、低い点を隠していた新人へ、自分から休憩の椅子を勧められるようになった。

娘が選んだのは、同じ学校だけではない。母親にも、誰かと同じ場所に立つ生き方を教えたのだった。