城壁三番の短い釘

攻城隊が最初の梯子を城壁へ掛けたとき、踏み板が全部外れた。

 兵士が三人、板と一緒に堀へ落ちる。

「釘を打ち直せ!」

 工兵長ヴァンガが叫んだ。補給箱を開けると、長い釘、短い釘、平頭釘が一つの山になっている。どれも泥で黒く、見分けるには一本ずつ測るしかない。

「三番壁用の短釘はどれだ?」

「荷物持ちのソルドしか知りません」

 昨日、ヴァンガはソルドを陣外へ追放した。「戦わず箱に番号を振るだけの臆病者」と罵って。

 ソルドは釘や留め金を壁の高さごとに箱分けし、暗闇でも触れば分かる刻みを入れていた。三番壁は石が薄いため短釘、正門は衝撃に耐える平頭釘。混ぜれば、長釘は石へ当たって曲がり、短釘は木を貫けない。

 新しい係は箱の空きを惜しみ、すべてを一つへ移した。ソルドが残した一覧札も「箱が一つなら不要」と捨てた。荷車一台を減らして浮いた費用は、梯子一本より安かった。

 敵の矢が降る中、工兵たちは釘を選ぶ。ようやく梯子を直したころには、城壁の上から油壺が落ちてきた。初日の攻撃は、一枚の踏み板にも届かず終わった。

 そのころソルドは、攻められる側の隣町で、洪水用の堤防部材を並べていた。

「青い刻みは北岸、二本線は水門。夜でも指で選べます」

 技師コリネが目隠しをして箱へ手を入れる。命じられた留め金を三つとも間違えず取り出した。

「増水時は灯りが消える。名前を読めなくても組める箱が必要だった」

 試験放水で水門は予定より早く閉まり、町の職人たちがソルドを囲んで拍手した。彼の役職は《緊急部材統制官》と決まった。箱の刻みは町の標準規格となり、新人職人にも最初に教えられた。

 夜、攻城隊の騎兵が町門を叩く。

「工兵長命令だ。釘箱を持って戻れ。城を落とせば、お前の追放は帳消しにする」

「帳消しにするのは、命令した側なのですね」

「口答えは後だ。二日目の攻撃まで時間がない」

 ソルドは水門用の箱へ封印を掛けた。

「陣籍を抹消された時点で、攻城隊との部材管理契約は終了しています」