崩落は予定表から始まった

鉱山参謀ドゥエラが一族から追放された翌日、銀山の昼鐘と同時に三本の坑道で発破が行われた。

最初の爆音に、二つ目の爆音が重なった。

三つ目が鳴る前に、山が沈んだ。

坑道同士を隔てる岩盤へ衝撃が集中し、支柱が一列に折れた。入口は土煙で塞がれ、鉱主ゴルザックを含む二十人が奥へ取り残された。

「火薬の量は昨日までと同じだ!」

監督が叫ぶと、古参鉱夫は煤だらけの顔で言った。

「時刻が同じだったんです」

ドゥエラは坑道ごとに発破を半刻ずらし、最初の振動が地中から抜けたのを水皿で確かめてから次へ合図していた。火薬帳の脇にある細い時間線こそ、山を支える見えない柱だった。

一族は彼女を「石を掘らず紙に線を引くだけ」と笑い、追放の日に予定表を焼いた。

坑内からは、一定間隔で鉄管を叩く音が聞こえた。生存者はいる。しかし救助を急いで一度でも誤った場所を爆破すれば、残った空気穴まで潰れる。鉱主は初めて、時間を短くすることと、助かる時刻を早めることが同じではないと知った。

焼かれた予定表の灰を集めると、発破の間には必ず「観測」と書かれた空白があった。何もしない時間に見えて、山の返事を聞くための工程だった。その空白を消した瞬間から、崩落は始まっていた。

同じ頃、ドゥエラは運河工事現場で、小規模な爆破を指揮していた。

「東壁の石が静まってから西を崩します。鐘が鳴っても、水皿が揺れていれば待ってください」

作業員たちは三度待ち、四度目の合図で岩を割った。予定より遅れたのは十二分。それでも亀裂は設計線どおりに走り、隣の民家では棚の杯一つ揺れなかった。

技師ソニェルは、ドゥエラへ工事参謀の真鍮笛を渡した。

「速く爆破する者より、次の一発を撃てる地面を残す者が必要だ」

夕方、銀山から泥まみれの少年が来た。坑内の空気が尽きる前に戻り、救出発破の順番を作ってほしい。家督の一部も返すという。

ドゥエラは少年から坑内図を受け取り、ソニェルへ救助隊の出動を頼んだ。命を助ける依頼は、運河組合の外部救援として引き受ける。家へ戻り、再び無償で働くことだけはしない。

ドゥエラは笛を一度だけ鳴らし、返書を渡した。

「銀山との労務および参謀契約は、昨日の勘当で終了しています」