最後の村を最初に積む

洪水で三つの村が孤立した。

救援車には食料、薬、毛布が積まれたが、村ごとの荷が混ざっている。一番手前に第三村の毛布、奥に第一村の薬。前回は最初の村で荷を全部下ろし、必要分を探して積み直すのに一刻かかった。

「積める物から積め。急いでいるんだ」

役人に怒鳴られ、遼は荷車の扉を閉めた。

「だから順番を変えます」

地図上で最後に着く第三村の荷を最初に奥へ入れた。次に第二村。一番手前には、最初に寄る第一村の薬と食料。知識は、降ろす順番の逆に積む。それだけだった。

荷車が泥道を走り、第一村へ着く。

扉を開けると、必要な薬箱だけが目の前に並んでいた。印を照合し、五分で降ろす。ほかの荷には一度も触れない。

高熱の子供へ解熱薬が届いたのは、前回より五十五分早かった。母親が震える手で飲ませると、荒かった息が少しずつ長くなる。

第二村では食料二十箱と毛布十束が手前へ現れ、七分で配布所へ運ばれた。第三村に着いたとき、残っていたのは第三村の荷だけだった。数え間違いも積み戻しもない。

第三村の名札が付いた箱を、村長自身が数える。食料十五、薬四、毛布二十。出発時の記録と一つも違わない。前回混ざって届いた第二村用の乳児薬も、今回は必要な場所へ先に渡っていた。

御者は荷台の床を見て驚いた。途中で何度も積み直さなかったため、縄の擦れ跡がほとんどない。箱の角も潰れず、薬瓶の破損はゼロ。荷役に使っていた十人は、到着後すぐ堤防補修へ回れた。

遼がしたのは、荷の量を増やすことではない。扉の前に、次に必要な物だけを置いたことだった。

全行程は三刻短縮。日没前に荷車が帰還した。

役人は空の荷台を覗き、泥だらけの記録板を見る。前回は荷崩れ二件、紛失三箱。今回はゼロ。

領主が第一村から届いた伝令を読む。

『薬、間に合う。子供の熱、下降』

それだけで、広間の空気が変わった。

領主は役人が用意した叱責状を裏返し、任命状へ書き直した。

「以後、救援物資の積載順は遼が決める。領内輸送隊の指揮権も渡せ」

次の荷車では、最後の村の箱から先に積み込まれた。