月穴の戦図

蘇文岱の戦図は、虫食いだらけだった。

山、河、村、烽火台。墨線は正確だが、紙には針穴が四十七ある。敵の検使・韓復明は、それを灯火へ透かして鼻で笑った。

「こんな地図を誰が買う」

「古い紙ほど、役人は信用します」

本当の密書は穴だった。図を北へ向け、月光へ透かすと、穴の並びが四文字を作る。〈西門、丑刻〉。墨の地図は、その向きを決めるためだけにある。

文岱は地図売りを装い、敵軍が接収した青崖城へ入る測量商隊に潜った。復明は地図を机へ広げ、濡れ布で墨を擦った。隠し墨を探している。

山脈が消え、河が滲んだ。穴は残った。

次に油を塗り、裏から火へかざす。紙の継ぎ目も、貼り込んだ薄紙もない。

「穴の数に意味があるな」

復明が言った。

文岱は肩をすくめた。

「四十七です。縁起の悪い数でしょう」

「数えたのか」

「売り物の傷は数えます」

返答を誤った。知らぬふりをすべきだった。復明の視線が鋭くなる。

検使は針を取り、穴を一つ増やした。

文岱の胸で何かが冷えた。一つ加われば文字が崩れる。

「四十八なら、もっと縁起がよい」

復明は二つ目を開けようとした。

文岱は机へ額を打ちつけた。灯皿が倒れ、油が地図へ広がる。兵が彼を押さえる間に、復明は燃え移る前の図を拾い上げた。商品を守ろうとした間抜けに見えたはずだった。

「地図は城の測量所へ渡せ。こいつは夜明けまで吊せ」

文岱は柱へ連れて行かれる途中、城の輪郭を一度だけ見た。自分で描いた図より西壁が低い。半年前の地震で沈んだのだ。だが密書の穴は古い高さを基準にしている。月の位置がずれれば文字も崩れる。彼は護送兵へ蹴られながら、雲の流れと塔の傾きを暗算した。

青崖城の測量官・兪景澄は、濡れた図を塔の窓へ張った。月光が四十八の穴を通る。増えた一つは西門の〈門〉に小さな点を足しただけだった。文岱は倒れた瞬間、油の指で余計な穴へ印をつけていた。

〈西門、丑刻〉

景澄は図を畳み、烽火手へ渡した。

外郭の処刑柱で、文岱は縄の軋みを聞いた。

西塔から、青い烽火が一本立ち上がった。