月見団子は十五でなくても

 三枝柚葉は、中秋の名月には団子を十五個供えるものだと思っていた。

 祖母の家でそうしていたからだ。

 一人暮らしを始めた今年、初めて自分で作ることにした。

 白玉粉へ水を加え、耳たぶくらいの柔らかさにする。

 説明どおりのはずなのに、丸めると大きさがそろわない。小さいものを足し、大きいものを削っているうち、一つが床へ落ちた。

 残り十四個。

 作り直そうとしたところへ、隣室の佐鳥がすすきを持って訪ねてきた。

「河原にいっぱいあったから」

「ちょうどよかった。でも団子が一つ足りない」

「月は数えるかな」

「十五夜だから、十五個でしょう」

「月は一個なのに?」

 柚葉は答えられず、二人で十四個を茹でた。

 鍋の底へ沈んだ団子が、しばらくすると一つずつ浮いてくる。全部が浮くまで待ち、冷水へ取った。

 佐鳥はきな粉、柚葉は黒蜜を用意した。

 窓辺へ小さな台を置き、団子を積む。

 十四個ではきれいな山にならず、上に一つ載せると全体が傾いた。

「寝転んで月を見る配置」

 佐鳥が言う。

「団子に姿勢はない」

「ある。これは休んでる」

 雲が多く、月はなかなか出なかった。

 二人は先に団子を食べ始めた。きな粉が卓へこぼれ、黒蜜が皿の縁を伝う。

 白玉は少し硬いものもあったが、噛むほど米の甘さが出た。

「来年は市販にしようかな」

「今日の形、もう作れないよ」

 それもそうだと思った。

 しばらくして雲が切れた。

 月は窓枠の上に、思ったより白く現れた。

 十四個の団子にも、二人分の湯呑みにも、同じ光が落ちる。

 柚葉は祖母へ写真を送った。

〈一個足りない〉

 返事はすぐ来た。

〈食べた人が一人多いなら、それでいい〉

 窓辺には、すすきの乾いた匂いと焙じ茶の香りが混じった。

 柚葉は最後の団子を半分に切り、佐鳥と分けた。

 これで数はさらに合わなくなったが、皿はきれいに空になった。

 月は何も数えず、雲の間で静かに明るかった。

 柚葉は来年も十五個作ろうと思った。ただし一つ足りなくなったときは、すぐ誰かを呼べばよかった。