枯れ木が返した一個
バルガスは三十年、王の処刑人を務めた。
最後の仕事で、罪状を読まれた少年が自分の息子と同じ年だと気づき、斧を置いた。
その日のうちに追放され、辺境の枯れ果樹園を与えられた。
果樹園には一本だけ、完全には死んでいない林檎の木があった。
バルガスは枝を切り、幹の虫を取り、毎朝一桶の水を運んだ。斧を握った手には剪定鋏が小さすぎ、最初は細枝を何本も傷つけた。それでも木は彼を責めず、切り口の下から新しい芽を出した。
春に花が三つ咲き、夏に二つ落ち、秋まで残った実は一個だけだった。
収穫の朝、赤い林檎は高い枝で風に揺れていた。
斧なら一振りで木ごと倒せる。
だが彼は梯子をかけ、一段ずつ上った。
掌で包み、実を持ち上げるようにひねる。
枝が軽くなり、林檎が手に残った。
木は何の音も立てなかった。それでもバルガスには、長い仕事を終えた者同士が黙って頷き合ったように思えた。彼は幹へ大きな手を当て、「来年も頼む」と小さく言った。
処刑人の斧よりはるかに軽いのに、バルガスは両手で大切に抱えた。皮には小さな傷があり、片側だけ赤い。それでも胸を張るような匂いがした。
門前には王の早馬が待っていた。
「大罪人の公開処刑が決まった。陛下は、お前にしか任せられぬと」
騎士は黒い命令書を差し出す。
バルガスは受け取らず、林檎を見た。
「両手が塞がっている」
「たった一個の果物だろう」
「だから落とせん」
小屋へ入り、林檎を四つに切る。
一切れはそのまま噛んだ。しゃくり、と明るい音がして、酸味のあとから細い甘さが出た。
残りは小鍋へ入れ、蜂蜜と少量の水、香木の粉で煮る。
赤い皮がほどけ、甘酸っぱい湯気が上がる。
薄い生地へ包み、炉で焼けば、端から蜜がぷつぷつ漏れた。
騎士は戸口で命令書を握ったままだ。
「陛下を待たせるのか」
「私は三十年、待てと言えなかった者たちを待たせた」
バルガスは焼けた林檎包みを皿へ移す。
「今夜くらい、王に待ってもらう」
割ると中から湯気があふれた。
最初の一口は熱く、舌を少し焼いた。それでも彼は笑った。
枯れ木が返してくれた一個を味わうあいだ、黒い命令書はとうとう小屋の中へ入れなかった。