橋を凍らせた霜角山羊

国境の大橋が真夏に凍りついた。

橋の中央には、青い角を持つ白山羊が立っている。雪崩を鎮める聖獣、霜角山羊。その蹄から広がる氷に荷馬車が立ち往生し、兵士たちは火矢を用意した。

通行税を集めるアニカは、料金所の窓から山羊の首を見た。

太い綱が二重に巻かれ、切れた杭を引きずっている。誰かが見世物にしようと捕らえたのだ。綱の下には紫色の腫れが見えた。

山羊は橋を奪いに来たのではない。追っ手の来ない開けた場所で、動けなくなっただけだ。

「火を放ったら、傷まで焼けます」

「下がれ。あれが一歩踏めば橋が砕ける」

隊長の制止を振り切り、アニカは徴税用の小屋から塩袋と毛布を持ち出した。

塩を氷へ細く撒き、自分が滑らない道だけを作る。霜角山羊は角を向けたが、彼女は綱を指さしてから鋏を見せた。

「税金は取るけど、首輪代までは取らないよ。切らせて」

返事の代わりに白い息が顔へかかった。

近づくと綱は濡れて縮み、毛と皮膚へ食い込んでいた。アニカは一気に切らず、間へ毛布の端を差し込む。肌を守りながら一本ずつ鋏を入れた。

最後の縄が落ちると、山羊の首から血が流れた。

薬はない。そこでアニカは料金所に備えていた強い酒を布へ含ませ、傷を拭いた。霜角山羊がびくりと震える。

「しみるね。私も給料日前は同じ顔になる」

冗談を理解したのか、山羊は小さく鼻を鳴らした。

干し草と塩を少し与えると、夢中で食べる。何日も繋がれ、水しか口にしていなかったらしい。

追っ手らしい商人が橋の向こうから叫んだ。

「それは私の商品だ! 銀貨百枚で買った!」

アニカは料金表を掲げた。

「生き物の売買証は無効です。ついでに、橋上への杭の投棄は罰金銀貨百一枚」

霜角山羊が一声鳴くと、商人の足元だけが氷に固められた。

そして山羊はアニカのそばへ戻り、前脚を折って横たわる。額の霜紋が光り、彼女の首元へ小さな角の印が移った。

白い顎が膝へ載る。冷たそうな毛は、撫でれば雪の下の土のようにじんわり温かい。ずしりとした頭を受け止めながら、アニカは今日はもう橋を閉鎖しようと決めた。こんな重い通行客からまで、急いで料金を取る必要はなかった。