水面の証言

あの人は私を湖に突き落とした。

沿岸警備の聞き取り室で、私は毛布にくるまり、同乗者の行動を説明した。遊覧用の小型艇が沖で停止し、私がエンジンを調べていると、背後から押された。水中でもがく私を見下ろし、同乗者は救命胴衣の肩を刃物で切った。

幸い、巡回艇に救助された。同乗者は別の船に拾われ、低体温症で病院にいる。私は殺人未遂として処罰してほしいと訴えた。艇の保険金は私が受け取る契約だったが、それは共同所有者なら普通だと付け加えた。

担当官は私の衣服を見た。全身は濡れているが、湖底の黒い泥が膝から下だけ帯状に付いていた。

「沖で何かに絡んだんです」

「巡回艇の隊員は、あなたが浅瀬で立って手を振っていたと証言しています」

沖から流された末、偶然足がついただけだと私は答え、毛布を引き寄せた。

湖面は穏やかで、強い流れもなかった。私の説明通り沖から漂えば、救助地点へは着かないという。

切られた救命胴衣も机に置かれた。刃は外側からではなく、体に接する内側から入っている。相手が切ったときに向きが変わったのだろう、と答えた。

担当官は艇に取り付けられていた水中撮影機の映像を再生した。釣り用の小さなカメラで、存在を忘れていた。

画面の上で、私は同乗者の背中を押した。相手の足首には、私が事前に結んだ錨綱が絡んでいる。保険金の受取人を変えさせた翌日のことだった。

ところが綱が私の胴衣にも巻きつき、艇から落ちたのは二人だった。同乗者は水中で刃物を抜き、私の胴衣を内側から切って綱を外した。その後、自分の足首の縄を解く前に、私を浅瀬まで押し上げた。

私の服の泥が膝下にしかないのは、沖で救助されたからではない。同乗者に押し上げられた浅瀬で立ち、そこから巡回艇へ合図したからだった。

あの人は私を湖に突き落としたのではない。

私に沈められながら、罠にかかった私を水面へ戻した。

殺されかけた被害者として証言していた私は、救われた加害者だった。