消えた保冷剤

ミールキット倉庫の梱包台で、保冷剤が二百枚消えた。

午前一時、笠松渉は翌朝便の最終波をまとめていた。箱数は二百。中身には肉、野菜、紙袋入りの粉類があり、冷えればよいという荷物ではない。梱包規格では一箱に保冷剤を二枚入れる。開始時に四百枚用意したのに、半分を詰めた時点で残りはゼロだった。

「誰かが別ラインへ持っていったんだ」

班長は防犯映像を確認しようとした。渉は先に、完成した箱を十個だけ量った。どれも規定より約一キロ重い。保冷剤は一枚五百グラム。二枚余計に入っている計算だった。

原因は盗難ではなかった。冷凍庫から出した保冷剤が二枚ずつ凍りつき、作業員は一束を一枚だと思って、二束ずつ入れていたのだ。透明な袋同士が密着し、手袋越しには境目が分からない。急ぐ作業員ほど、角をつまんで確かめる一秒を省いていた。

「全部開け直しだな」

班長が箱へ手をかけた。渉は完成品の送り状を見た。冷蔵品だけの箱と、常温の乾物を含む箱が混じっている。余分な冷気で乾物が結露すれば、紙袋が破れる。先に常温品入りだけを止めなければならない。

彼は重量データで箱を三群に分けた。規定内、五百グラム超過、一キロ超過。最も重い箱から開け、余分な保冷剤を抜く。抜いたものは床へ置かず、網かごで一枚ずつ離した。表面の霜が解けた保冷剤は再冷凍へ回し、濡れたまま使わない。水滴が送り状の接着を弱めるからだ。

残った箱は、個数ではなく重量で最終確認した。秤の脇には正常な一箱を見本として置き、数字を読む前に持った感触でも異常を拾えるようにした。作業員が一枚ずつ数えるより、凍りつきを見落とさない。

午前三時十分、二百箱は規定重量にそろった。余った保冷剤は、最初に消えたのと同じ二百枚だった。

「数は合ってたのに、見えてなかったんですね」

新人が言うと、渉は網かごの間隔を広げた。

「冷凍庫では、二つが一つになる」

出荷車の扉が閉まる前に、次の波動が端末へ届いた。今度は保冷剤を三枚入れる、真夏日対応の臨時規格だった。

渉は重量表に新しい行を足した。夜明けが近づくほど、冷たい仕事は増えていった。