混ぜていい夜
巨人族の娘ゴルマは、鉄板の上のお好み焼きを見て腕を組んだ。
刻んだキャベツ、粉、卵、豚肉、天かす。交流宿の主人は、それらを一つの鉢で混ぜ、丸く焼いた。ゴルマの里では、食材は身分ごとに皿を分ける。穀物は働き手、肉は長、香草は祭司のものだ。
「全部を混ぜれば、誰の分か分からなくなる」
「今日はゴルマさんの分です」
主人は大きなへらを二本渡した。
「自分で返してみます?」
人間用の鉄板では、彼女の掌ほどの小さな円だ。簡単だと思ったが、へらを差し込むと生地が揺れた。力を入れすぎれば割れそうで、弱ければ持ち上がらない。
「せーの」
主人の声に合わせて返す。お好み焼きは一瞬宙へ浮き、少し横へずれて着地した。端から生地がはみ出し、きれいな円ではなくなる。
「失敗だ」
「ちゃんと焼けてます」
やがて表面へソースを塗り、マヨネーズを細くかけ、青海苔と鰹節を散らした。甘いソースが鉄板で温まり、香ばしい匂いが立つ。
へらで一切れ切る。外はこんがり、中には蒸されたキャベツの甘さが詰まっていた。豚肉の脂、天かすの軽い歯触り、紅生姜の辛み。混ざっていても、それぞれの味は残っている。
「一つになったのに、キャベツはキャベツだ」
「好きなものを入れていい料理ですから」
ゴルマは故郷から届いた手紙を思い出した。家族は彼女に石切場を継いでほしい。だが本人は、交流宿でパンを焼く仕事を覚えたいと思っている。家族を捨てるのではない。ただ、石と小麦を同じ人生へ入れてよいのか分からなかった。
「違うものを混ぜると、どちらでもなくなると思っていた」
「新しい名前にはなりますね。でも、元の味はなくなりません」
ゴルマは二切れ目を食べ、焦げた端を気に入った。家族への返書へ、〈石切りの技は忘れない。だが一年、パン窯を学びたい〉と書く。
食べ終えた鉄板には、丸くないソースの跡が残った。宿の主人が水を落とすと、じゅうっと白い湯気が上がる。
ゴルマはその匂いを胸いっぱい吸った。明日の朝は、小麦をこねる。その夜、家族の石槌も手入れする。混ぜてよい一日が、鉄板の上で温かく待っているようだった。