湯気を上げる黒い山
城下には、馬糞の山と痩せた畑が隣り合っていた。
厩舎は処分費を取り、農民は肥料代を払う。それでも生の糞を直接撒いた畑では苗が焼け、酸っぱい臭いに虫が集まる。市参事は今年も「平民の畑が臭い」と罰金を増やそうとしていた。
加治木沙世は、厩舎の糞と収穫後の麦藁を交互に積んだ。
糞一層、藁一層、水を一桶。人の胸ほどの山にして、三日ごとに外側と内側を鍬で返す。
「混ぜれば糞が金になるのか」
参事メルガンは、試験期限を二十日に決めた。期限内に使える肥料にならなければ、沙世へ罰金百枚を負わせるつもりだった。
二日目、山の中央へ差した鉄棒を抜くと、湯気が立った。手で握れないほど熱い。隣の放置糞は冷たいまま、蝿だけが黒く群れている。
七日目、沙世が山を返すたび白い蒸気が上がり、酸っぱい臭いは弱くなった。十五日目には形の残る藁が減り、二十日目、山は量が半分になって黒い土のような匂いへ変わった。
沙世は完成した山と生糞を、同じ大きさの鉢へ一杯ずつ混ぜ、麦を二十粒蒔いていた。
生糞の鉢は五本しか芽を出さず、葉先が茶色い。黒い山の鉢は十九本がそろって立ち、平均の高さは一尺一寸。触れても根元に熱はない。
「別の土を混ぜたな」
メルガンが山を掘り返した。出てきたのは、最初に目印として埋めた青い陶片。材料をすり替えていない証拠だった。
蝿取り布も並べられた。放置糞の脇では一日で三百匹、黒い山の脇では十八匹。熱と切り返しで生の臭いが消え、畑へ運ぶ者も鼻布を外していた。
会計官が数字を読み上げる。糞の処分費が月銀貨六十枚。麦藁の焼却費が二十枚。完成した堆肥は百袋、農家の購入希望は一袋銀貨二枚。捨てる金が、その場で収入へ変わった。
参事は罰金状を隠そうとしたが、市長が先に取り上げた。
「城外三か所へ堆肥場を造る。厩舎処分契約と農家への販売権は、沙世に一括して任せる」
最初の百袋には、罰金札ではなく完売の赤印が押された。