王座が返す顔
玉座の間へ、敵の槌音が近づいていた。
司令官オルフィダは、黒い石の玉座へ座った。城塞の矢塔も落石口も、この椅子から命じれば動く。だが命令を一つ出すたび、座った者の顔の一部が、かつて同じ命令を出した支配者のものへ変わる。
玉座の背後には古い肖像が並んでいた。最も大きいのは、民を飢えさせた王ゼルバスの顔だった。
「西の落石口を開け」
床の下で鎖が動き、回廊へ侵入した敵兵を石が押し潰す。
オルフィダの左目が灼けた。侍従メクナが鏡を差し出す。瞳はゼルバスと同じ金色へ変わっていた。
「南塔、回転」
塔が軋みながら向きを変え、城内へ登った敵の梯子を薙ぎ払う。右の頬骨が盛り上がり、肖像の王と同じ傲慢な線を作った。
三つ目の命令で鼻が変わり、四つ目で唇が薄くなる。
兵たちは命令に従いながらも、オルフィダの顔を見なくなった。この城でゼルバスの顔は、敵より恐れられていた。
正門が破られた。
残る仕掛けは一つ。玉座の真下にある古い柱を倒せば、門前広場ごと崩し、侵入軍を地下へ落とせる。だが命令した者の顔は、最後までゼルバスになる。
「声まで変わるかもしれません」とメクナが言った。「兵があなたを王と誤れば」
「顔で命令してきた者たちの報いだ」
オルフィダは肘掛けを握った。
「礎柱を折れ」
地鳴りが走る。門から雪崩れ込んだ敵兵が、石畳とともに暗い穴へ消えた。城塞は半分沈みながらも持ちこたえ、外から退却の角笛が聞こえる。
鏡の中には、若い女の面影が一つも残っていなかった。
金の瞳、尖った鼻、薄い口、白い髭。ゼルバスが王衣ではなく血まみれの鎧を着て座っている。
勝利を知らせに入ってきた兵たちは、その顔を見て剣を抜いた。
「亡霊だ」
メクナが前へ出て、オルフィダだと叫ぶ。だが玉座は最後の命令の代価として、声まで返した。
「私だ」
口から出たのは、処刑場で聞いたという老王の声だった。
兵たちは膝をついた。敬意ではなく、恐怖で。
オルフィダは城塞を守った。けれど立ち上がったとき、誰一人その名を呼ばなかった。
玉座の脇の肖像だけが変わっていた。王の顔の下に、彼女が失った若い顔が、新しい罪人のように描かれていた。