百二十七人の拍手

巴は投稿ボタンを押してから、三分おきに画面を更新していた。

今日焼いた小さなレモンケーキ。表面が少し割れたけれど、窓辺に置き、明るさを調整して撮った。〈久しぶりにお菓子作り〉と短く添えた。

十五分で、いいねは六つだった。

同じ時刻、フォローしている知人がカフェの写真を投稿していた。いいねはすでに百二十七。コメント欄も埋まり、本人は一つずつ丁寧に返している。

巴のフォロワーは百八十人。その半分は昔の同級生や、もう話さない前職の人だった。六人が少ないのか、多いのか、本当は分からない。ただ隣に百二十七という数字があると、急に答えが決まったように見える。

レモンケーキの端を切って口へ入れる。少し焼きすぎて、外側が固い。写真では分からない程度の失敗だった。

通知が一件増えた。期待して開くと、通販サイトの広告だった。巴は笑いそうになったが、笑うほどでもなく、スマートフォンを置いた。

休日の午後を使って、粉を量り、卵を混ぜ、オーブンの前で膨らむのを待った。出来上がったときは嬉しかったはずなのに、投稿した途端、その時間が六という数字に縮んだ。

巴は投稿を削除しようとした。反応の少ないものがプロフィールに残るのが恥ずかしかった。けれど削除画面の小さな写真を見て、今朝、レモンの皮を削ったときの香りを思い出した。

数字には、その匂いが入っていない。

削除をやめ、アプリを終了した。ケーキをもう一切れ切り、今度は写真を撮らずに皿へ載せる。割れ目に粉砂糖が溜まっていて、そこだけ甘かった。

六人がどんな気持ちで押したのかも分からない。押さなかった人が何をしているのかも分からない。分からないものを、評価の表にするのは今夜だけやめる。

巴は残りをラップで包み、冷蔵庫へ入れた。明日の自分が食べる一切れには、いいねはつかない。それでも、たぶん今日より少ししっとりする。

投稿は六のまま残った。巴はその数字を増やす代わりに、ケーキを一つ保存した。