真実薬を開けたのは誰か
王立薬師ギルドの品評会で、ゼインは妻アマリアの薬瓶を払い落とした。
「王妃の若返り薬を完成させたのは私だ。妻は配合表を盗み、私とコルネ嬢の清らかな協力関係を浮気だと中傷した」
スポンサー令嬢コルネが腕を組み、アマリアを見下ろす。彼女はゼインの寝室から出てきたところを見られても、「夜通し研究していただけ」と言い張っていた。
「妻は嫉妬で嘘をつく。だから、これを飲ませる」
ゼインが掲げたのは《告白の雫》。一滴吸えば、隠している事実を口にしてしまう真実薬だ。彼はアマリアを公衆の面前で屈服させるため、自ら封を切った。アマリアが「その瓶は返してください」と一度だけ告げても、ゼインは盗品であることを認める代わりに、彼女が完成を妨害している証拠だと決めつけた。
アマリアは瓶を受け取らない。
「説明書を最後までお読みください」
「時間稼ぎか。作った私が知らないはずがない」
ゼインが栓を抜いた瞬間、淡い煙が彼の顔を包んだ。瓶の底にはアマリアの工房印があり、注意書きには《開封者へ作用する揮発式》と記されている。彼は妻の完成品を盗み、自分の名札を貼っただけで、試してすらいなかった。
「コルネと寝たのは十二回だ!」
ゼインの口が勝手に動いた。
「王妃の薬はアマリアが作った! 配合表を盗み、コルネの父へ売る約束をした! 妻を虚偽告発で追放すれば工房も私のものになると思った!」
コルネが逃げようとする。
「私は知らないわ!」
だが煙は、瓶を一緒に開けた彼女の指にも触れていた。
「私が寝れば王宮契約を取れると誘った! ゼインの妻が邪魔だから、毒を入れたことにしようと相談した!」
会場の審査員が一斉に記録水晶を向ける。真実薬の発言は薬効鑑定とともに自動保存され、撤回できない。それもゼインが「妻の嘘を永久に残せ」と要求した規則だった。
アマリアは床の薬瓶を拾い、自分の名札を貼り直した。
ギルド長が免許台帳を開く。
「薬師ゼインおよび出資者コルネに対する、資格剥奪と身柄拘束命令を読み上げる」