砂鐘荘の涼しい壁

砂漠の宿場では、親のない子どもたちが隊商の天幕の隙間で夜を越していた。隊商が出れば寝床も消える。最年長のアニサは、朝ごとに「今日はどの影が残るか」を数えた。

宿場長ファルークは、使われていない税関の土蔵を住居にすると告げた。石商人たちはすぐに尋ねた。

「改修費を隊商税へ上乗せするのか」

「荷の価格には触れない。宿場の屋根付き厩を使った駱駝一頭につき銅貨一枚。野営した者からは取らない。徴収箱は入口へ置き、毎晩、頭数と金額を砂盤へ記す。半分を土蔵の冷却壁、四分の一を井戸、四分の一を修繕積立にする」

大型隊商も小隊商も一頭あたり同額だが、無料の野営地を残したため、貧しい旅人が追い出されることもない。領主の隊商八十頭分を、ファルークが最初に納めた。

徴収箱の鍵は宿場長、隊商組合、住人代表の三人が一本ずつ持ち、三本揃わなければ開かない仕組みにした。アニサが最初の住人代表に選ばれると、商人たちは子ども扱いせず、頭数の札を一緒に数えた。

日干し煉瓦職人が二重壁を提案し、水売りが夜露を集める樋を付けた。香料商は虫除けの葉を、絨毯商は床敷きを持ち寄った。誰も子どもを客寄せに使わないことも、規則にした。住居の前で「可哀想な孤児への寄付」を呼びかける露店は禁止し、必要額は帳簿で淡々と示す。余剰が出れば翌月の厩料を下げることまで、最初から約束した。値下げ額も同じ砂盤へ先に書く。

アニサは窓を小さくしてほしいと言った。

「外が見えない方がいいのか」

「違う。光を細くすれば、昼も眠れる。夜番の子がいるから」

働く時間も違う住人のため、部屋ごとに風穴の向きを変えた。

完成した正午、外気は焼けるほど熱かった。ファルークが土壁へ掌を当てると、内側は井戸水のように冷たい。子どもたちは床へ寝転び、誰からともなく笑った。

入口には古い砂時計が吊られた。

以前は隊商が去る時刻を測ったものだ。

その日から砂時計は、涼しい家へ帰る時刻を知らせた。