種から生えた一夜城

魔物の群れが、日没と同時に辺境村へ到達する。

王国軍は三日後。村にある柵は腰の高さで、戦える者は十人だけだった。代官は馬車を出し、税穀と自分の家財だけを積んで逃げた。

元兵士デュランは、除隊報酬の確定SSR袋を開いた。

必要なのは、百体を斬る剣ではない。戦えない者たちが朝まで生き残れる壁。

袋から転がったのは、どんぐりに似た灰色の種だった。

《守り木の種》

守りたい境界へ住民自身が石を一つずつ置き、その中央に植えると、同意の数だけ強い城壁になる。

「全員、家から石を一個持ってきてくれ」

「石で何が変わる!」

「俺一人の砦にはしたくない。ここに残りたい者だけでいい」

最初に石を置いたのは、足の悪い老婆だった。次に鍛冶屋の娘、粉屋、羊飼い。逃げる準備をしていた者も荷を降ろし、井戸の周りから石を拾った。家を失って一月前に流れ着いた旅人が遠慮すると、老婆は自分の石を半分に割り、「今夜ここにいるなら住民だ」と片方を渡した。幼児は掌ほどの小石を両手で運ぶ。

村を囲む輪が閉じた。

デュランは中央広場へ種を埋める。

地面から根が走り、置かれた石を一本ずつ結んだ。灰色の幹が輪に沿って立ち上がり、枝同士が絡み、あっという間に高い城壁となる。村人の数だけ狭間が開き、門は内側からしか動かない。

日没。魔物が殺到した。

角も牙も壁へ届くが、置いた石一つ分さえ崩れない。デュランは狭間へ弓を並べたが、挑発のためには一本も放たせなかった。戦わせず、村人に井戸水と毛布を配らせ、壁の弱い場所がないか交代で見回らせた。夜通し響いた衝撃は、夜明け前に止む。外では魔物たちが爪を折り、諦めて森へ戻っていった。

朝日を浴びた城壁は、丈夫な生け垣へ姿を変えた。畑へ出られる門も残る。

村長が代官屋敷の看板を外し、その木で新しい札を作った。

《この壁は、石を置いた者すべてのもの》

最後の文字を刻んだとき、守り木の葉裏が一斉に金色へ返る。

《SSR〈守り木の種〉――百八名の自由意思による完全防衛圏、世界初成立》