竜の力を半分ずつ

「二つの器の中身を半分ずつにする《半分こ》? 厨房向きだ。無能」

竜騎士団の選定で、ティセは水差し係へ落とされた。

《スキル:半分こ――接触する二つの容器の内容量を、等しく分け直す》

満杯の桶と空の桶を並べれば半分ずつになる。それ以上でも以下でもない。騎士長ウルザは笑い、ティセに竜用の水晶瓶を洗わせた。

ティセは大小の瓶で試し、奇妙な点に気づいていた。杯と樽をつないでも、中身は容積に合わせて分かれず、必ず同じ“量”になる。小さな杯には、入りきらない水が圧縮されて震えた。器さえ壊れなければ、大きさは関係ない。だから彼女は、特に厚い水晶瓶だけを選んで磨いていた。笑われても、六本だけは手元から離さなかった。

その午後、団の守護竜が魔蝕に狂った。

巨体から噴き出す魔力で鎖が溶け、騎士たちは近づくことすらできない。殺せば国境の守りを失う。だが放置すれば王都まで焼く。

ウルザが竜殺しの槍を構えたとき、ティセは洗い終えた空瓶を抱えて走った。

「その瓶では魔力一滴しか入らん!」

「一滴を汲むんじゃありません。半分にします」

竜の胸には、魔力を蓄える竜珠がある。肉に包まれていても、竜珠は力を収める器だ。

ティセは熱で焼ける鱗へ空瓶を押しつけた。

《半分こ》

空瓶が紫に満ち、竜の魔力が半分へ落ちた。

それでも暴れる竜へ、二本目を当てる。残った半分がさらに二つへ分かれ、竜には四分の一。三本目で八分の一、四本目で十六分の一。

瓶はどれも小さい。普通なら到底入らない量だが、能力が分けるのは器の大きさではなく“中身の割合”だった。水晶が悲鳴を上げながら、圧縮された魔力を抱える。

六本目で炎が消えた。

守護竜は幼獣のように伏せ、荒い息をつく。魔蝕の黒い霧だけが、力を失って鱗から剥がれた。

ウルザは竜殺しの槍を地面へ置き、ティセが抱える六本の瓶を見た。

「俺は国の守りを殺すところだった。お前は力だけを六度半分にして、命を残した。水差し係を解く――今日から竜騎士団の魔力管理官はお前だ」