終末魔法の空白を梱包する

魔法学院の梱包係ヴォルクは、試験用の触媒を箱へ詰めるだけの平民だった。

彼の収納は容量を増やさず、品物の隙間だけを減らす。教授たちは「荷造りの小技」と採点すらしなかった。

【固有スキル《圧縮梱包》:一つの構成物に含まれる空白を収納し、各要素を破損させず密着させる】

皿の間の隙間を消せば箱が小さくなる。文字の間へ使えば読めなくなるため、図書館では使用禁止。ヴォルクは卒業資格も与えられず、貴族生徒の荷物を運ばされた。

首席生の卒業実演で事故が起きた。

王家に力を示そうと、禁書から《天星落下陣》を盗み出していたのだ。校庭いっぱいの魔法陣が起動し、雲の向こうに燃える隕石が現れる。

停止には一万二千の文字を逆順に唱える必要がある。落下まで十秒。結界は内側からしか触れず、首席生は真っ先に転移した。

学院長は平民のヴォルクを捕まえた。

「お前が触媒を取り違えたと証言しろ。どうせ全員死ぬ!」

ヴォルクは魔法陣を見下ろした。

終末術式は文字でできている。文字が別々の命令として働くのは、その間に空白があるからだ。空白は何もないのではない。要素を分け、意味を成立させる構成物の一部である。

残り五秒。

彼は結界へ手をつき、魔法陣全体を一つの構成物に指定した。収納するのは触媒でも魔力でもない。一万二千の文字の間にある、すべての空白だ。

能力は一度だけ。

金色の文字列が中心へ滑った。

間隔を失った命令は、発音も区切りもない巨大な一語へ圧縮される。術式は解読不能を示して停止し、空の隕石は火の粉となって消えた。密着した文字の中央には、首席生の署名と禁書の貸出番号が、隠しようもなく浮かび上がる。

戻ってきた首席生は、教授たちの視線を受けて立ち尽くした。

学院長が言い訳を探すより先に、王家の監察官が禁書窃盗の現行記録を封印する。梱包係の木札へ、学院の塔より大きな魔法文字が刻まれた。

【職業が《学院梱包係》から《概念梱包術師》へ書き換わりました】