罠に扉を狙わせる

「魔法が誰を狙うかしか分からない? 見れば分かる。無能は迷宮から出ろ」

勇者隊長ソルガはローデンの荷を入口へ投げ返した。

【標的鑑定:発動中の魔法が、現在何を標的としているかだけを表示する】

威力も属性も解除法も見えない。火球が飛んでくれば、狙われている者は鑑定せずとも逃げる。ローデンは探索隊を追放された。

ところが最下層で、隊は《千槍回廊》に閉じ込められた。入口の石扉は落ち、奥の封印扉も開かない。食料は半日分、転移石は迷宮の結界に封じられた。

銀の鍵を台座から取った瞬間、壁から無数の魔槍が現れた。盾で防いでも槍は消えず、向きを変えて何度でも戻る。僧侶の肩と戦士の腿がすでに貫かれていた。鍵を捨てても、宙に浮いたまま隊員を追い続け、一本を砕けば壁から二本が補充された。

後から一人で戻ってきたローデンは、槍を鑑定した。

――標的:銀鍵の所有者。

「鍵を持っているのは誰だ!」

「誰も持っていない!」

ソルガが叫ぶ。鍵は床に落ちている。それでも魔槍は、最初に拾った僧侶を狙っていた。迷宮は所有者を『最初に持った者』と認識しているらしい。

ローデンは鍵を拾い上げた。標的表示が一斉に自分の名へ変わる。

槍の群れが向きを揃えた。

「正気か!」

彼は逃げず、回廊の奥にある封印扉へ走った。扉には鍵穴があるが、鍵を差しても回らない。何百年も錆びつき、勇者の剣でも傷つかなかった門だ。

ローデンは鍵を深く差し込み、両手を離した。

表示が変わる。

――標的:封印扉。

鍵を保持する対象は、今や扉そのものだった。

「伏せろ!」

千本の魔槍が一斉に飛ぶ。封印扉は轟音とともに内側へ吹き飛び、槍もその向こうの守護核へ突き刺さって砕けた。

開いた先には、迷宮主の心臓が無防備に浮いていた。

ソルガが一刀で断つと、回廊の魔法はすべて消えた。

地上へ戻った勇者は、ローデンの追放札を銀鍵の代わりに壊れた台座へ置いた。

「敵の罠を避ける者なら大勢いる」

ソルガは開いた迷宮を振り返る。

「罠に道を開けさせる鑑定士を、無能と呼ぶ隊には私の方が残れん」