雨音の足輪
雨季の迎賓殿で、プラマ・センは青銅の足輪を嵌めた。
輪には小さな鈴が三つある。一歩ごとに澄んだ音が鳴る。
向かいのダオ・クアンも同じ足輪を着け、目へ黒布を巻いた。二人は王宮を追われた元近衛だった。王子誘拐の夜、プラマは寝殿を守り、ダオは水門を見張った。侵入者がどちらを通ったか分からず、二人とも罪を着せられた。今も相手の足音だけは、百人の中から聞き分けられる。北門の守将に雇われるのは一人。決闘は盲目で行い、鈴の音だけを頼りにする。
「布を外せば負け。足輪を捨てても負け」
審判が言った。
殿の瓦を豪雨が叩いている。床下の水路は溢れ、雨音だけで千の足音に聞こえた。柱から落ちる雫、屋根を走る鼠、遠くの象鎖までが鈴に似た音を返す。視界を奪うより、正しい音を一つ選ばせる方が残酷な試験だった。見守る近衛たちも声を出さず、誰が戻るべき男かを雨へ任せた。雨はどちらの罪も覚えていなかった。ダオは黒布の下で笑った。耳で勝つ稽古だけは、王宮を追われた後も毎晩続けていた。
太鼓が鳴る。
ダオは低く歩いた。鈴を鳴らさぬよう足裏を滑らせている。近衛の稽古どおりだ。プラマは逆に、一歩ごと大きく鳴らした。
右、左、右。
ダオの剣先が音を追う。
プラマは四歩目で足を止め、腰を落とした。足輪は外していない。左足を上げ、鈴のついた輪を刀の鍔へ軽く当てた。
音だけが、さらに一歩前へ出た。
ダオはそこへ斬り込んだ。刃が空を切り、柱へ食い込む。
プラマは音の後ろから踏み込み、刀の峰でダオの首筋を打った。黒布の下でダオの身体が崩れる。切っ先を喉へ添えたところで、プラマは動きを止めた。
「足輪を捨てた」
ダオが息を吐いた。
「足にある」
「鈴を剣で鳴らした」
「音を頼れと言われた。音を信じろとは言われていない」
審判が近づき、二人の黒布を外した。プラマの足輪は確かに足首に残っていた。雨水を浴び、三つの鈴が冷たく光っている。
王宮を追われた夜、二人は命令を信じすぎた。今夜は一人だけが、言葉の外側を歩いた。
北門の象鈴が鳴り、巨大な扉が内側へ開いた。