雪かきの跡
壮理が除雪の当番へ出た朝、佳鳴は玄関から門まで一本だけ道を作った。雪は膝まではない。それでも湿って重く、掬うたびスコップへ黙って居座った。
壮理は昼には戻ると言った。佳鳴は昼食に粕汁を用意し、鮭と根菜をゆっくり煮た。酒粕が溶けると、台所の窓が白く曇る。外も白いので、ガラスがどこにあるのか分からなくなった。
正午、遠くで除雪車の低い音がした。十二時半、音は近づいたが、壮理の長靴は現れない。佳鳴は玄関の雪をもう一度払い、細い道を少し広げた。帰ってきた人が肩をすぼめず歩ける幅にしたかった。
一時を過ぎ、粕汁を弱火にかけ直す。味見をすると朝より丸い味になっていた。待つうちにおいしくなる料理はありがたい。佳鳴は鍋へ礼を言いたい気持ちになった。
二時前、門の向こうに蛍光色の上着が見えた。壮理は自分の家の前だけ道が妙に広いと笑い、長靴の雪を落とした。手袋を外した指は赤く、髪には細かな水滴がついている。
「先に食べればよかったのに」
「鍋が待つと言ったから」
二人で粕汁を啜ると、壮理の頬がゆっくり色を取り戻した。外では屋根の雪が、柔らかな音を立てて落ちる。
食後、佳鳴は濡れた手袋をストーブの前へ吊るした。湯気と酒粕と、雪に濡れた毛糸の匂い。玄関までの道はまた薄く埋まり始めていたが、壮理の長靴の跡が、その真ん中に新しく続いていた。
壮理は昼寝をすると言い、ストーブの前で先に眠った。佳鳴は音を立てないよう椀を洗う。吊った手袋から落ちた雫が新聞紙へ丸い染みを作り、乾くにつれて輪郭を薄くした。窓を少し開けると、酒粕の甘さの向こうから、雪の無臭に近い匂いが入る。佳鳴は残った粕汁へ蓋をし、夕方の分に取っておいた。次に壮理が目を覚ますころには、また味が丸くなっているはずだった。
眠る壮理の靴下からも、少しずつ冷気が抜けていく。ストーブの上の薬缶は、小声で午後を沸かし続けた。