青い戸棚を守る夜

コルムが廃屋の台所で最初に見つけた食料は、豆一袋だった。

次に見つけたのは、その袋を狙う鼠の家族である。

青く塗られた戸棚の背板に拳ほどの穴が開き、床には豆の皮が散っていた。王都軍の元補給官として、コルムは敵より先に在庫の敵を見抜いた。

「今夜の戦線は、ここだな」

軍では十年間、一粒の麦まで数えた。兵糧が足りないと報告すれば、将軍は「士気を下げるな」と帳簿を書き換えさせた。拒んだコルムが追放された三日後、遠征軍は食料切れで撤退したという。

辺境へ持ってきた食料は少ない。だから今日直すのは、戸棚の穴一つだけ。

扉の青い塗料は剥げていたが、取っ手は磨けばまだ光った。コルムは新しく塗り直さず、手の触れる場所だけ布で磨いた。欠けた外見より、中身を守れるかどうかの方が大切だった。

背板を外すと、鼠が三匹、堂々とこちらを見ていた。コルムは追い回さず、外へ干し林檎を置いた。甘い匂いにつられて全員が出たところで、樫板を穴の形へ切る。四角く塞ぐだけでは齧られる。縁へ薄い銅板を巻き、釘を斜めに打って、歯の入る隙間をなくした。

銅板の縁で指を切らないよう、木槌で丁寧に折り返す。軍では兵の指一本の怪我まで「許容損耗」と記されたが、自分の台所に許容してよい怪我などない。

戸棚を揺すっても、背板は動かない。

棚板を拭き、豆袋、塩壺、干し肉を順に置く。空いている場所が多い。だが、空きは不足ではない。これから収穫したものを置く余地だ。

外では鼠たちが干し林檎を分け合っていた。コルムは小さな木箱を納屋の隅へ置いてやる。共存には、境界と別の食卓が必要だった。

豆を鍋へ移し、干し肉と煮る。蓋の隙間から湯気が上がり、脂と月桂樹の匂いが台所に広がった。

食事をよそう頃、戸棚の下で小さな音がした。

外へ出した鼠たちが戻り、穴の前に何かを並べている。青い硝子玉、錆びた銅貨、乾いた木の実。家賃のつもりらしい。

コルムは銅貨だけを拾い、残りは木箱へ戻した。

「食料庫は立入禁止だ。納屋の箱なら貸す」

鼠の親が一度だけ頭を下げた。直後、戸棚の扉に淡い文字が浮かぶ。

【食料損耗率:十二パーセント→ゼロ】

【共同居住規則:成立】

軍の一万袋を守っても、感謝の表示など出なかった。ここでは豆一袋を守っただけで、家と住人が結果を認めてくれる。

豆を一粒噛むと、ほくりと崩れた。

空いた棚は、これから収穫したもので埋めればいい。コルムは青い戸棚を眺め、今日残った全部をゆっくり味わった。