首飾りを着けない宝飾展

王立宝飾展の中央には、紫水晶の首飾りが飾られていた。

パメラは細い鎖を見るだけで息が詰まる。幼い頃、襟元を締める矯正具を着けさせられたためだ。

王弟公ルシアンは展示係へ、首飾りではなく同じ石のブローチを用意させた。

「彼女は首へ何も着けない」

「ですが殿下、首飾りこそ今季の婚約証です」

「余の婚約証ではない」

ルシアンは王家の錬金院を統べ、失敗した研究班を丸ごと解散させるほど冷徹だ。それでもパメラのドレスへ勝手にブローチを留めず、卓上に置いて尋ねる。

「試すか」

「手に持つだけなら」

「それでいい」

彼女が石を光へかざしていると、宝飾組合長が壇上から声を上げた。

「皆さま、殿下が最も寵愛するパメラ嬢に、王家の紫水晶を着けていただきましょう!」

侍女たちが首飾りを持って近づく。パメラは後ずさった。

「着けません」

組合長は笑顔を崩さない。

「一瞬だけです。殿下とのご縁を公に示すために」

「示したくありません。婚約も決めていません」

招待客がざわめく。ルシアンは首飾りを受け取ったが、彼女へ近づかなかった。

「展示台へ戻せ」

「殿下、今季最大の宣伝が」

「人の恐怖を宣伝へ使うな」

組合長は、王弟公が望めばパメラも喜ぶはずだと言った。

ルシアンは手元のブローチをパメラへ差し出すのではなく、選択肢を尋ねる。

「これは持ち帰るか。展示へ戻すか。別の品へ作り直すか」

「博物館に残してください。見るのは好きです」

「分かった」

彼は所有権を博物館へ移し、パメラを広告モデルとする契約書を破棄した。

「殿下の愛の証はどうなさいます」と組合長が問う。

ルシアンの声が冷える。

「余が愛しているから、彼女の首を飾る権利が生じると思うな」

紫水晶は誰の身体にも着けられず、硝子箱へ戻った。

パメラは、王弟公の面目を潰したのではと不安になった。

「拒まれて、恥ずかしくありませんか」

「余が勝手に期待したなら、余の感情だ」

ルシアンは淡々と答える。

「おまえの首へ飾りを掛けて取り繕うものではない」

その一言で、周囲が彼女へ向けていた非難の視線が揺らいだ。

「今後、パメラへ首飾りを勧める前には本人へ尋ねろ。拒んだあとは、理由すら要求するな」