骨竜の針は折れた背を縫う

城門を守った女剣士エレナは、腰から下の感覚を失った。魔獣の突進から子供たちを庇い、崩れた門柱を背で受け止めたのだ。救われた者は百人を超えたが、治療院で彼女に用意されたのは廊下の端だった。

治療院の長は一度診ただけで首を振る。

「背骨が砕けている。戦えぬ者に高価な薬を使う価値はない」

弟のネヴィは、その言葉を聞いて骨竜の墓場へ向かった。姉は止めたが、彼は『立てなくても姉さんの価値は変わらない。けれど、立ちたいと言った願いまで他人に決めさせない』とだけ答えた。

彼は回復魔法を持たない採取士だが、《患部指定ドロップ》を持つ。倒した生体系ボスから、指定した傷一つを完全に治す限定品が落ちる。

狙うのは《竜骨の継ぎ針》

骨竜の弱点は骨ではない。関節をつなぐ古い革だ。ネヴィは正面から斬らず、墓石の陰を渡り、膝、翼、首の留め革を順番に切った。崩れた頭蓋の中から、白い針が一本落ちる。

治療院へ戻ると、院長はエレナの寝台を廊下へ出させていた。

「英雄扱いも今日までだ。部屋を空けろ」

ネヴィは姉を抱き上げず、その場でうつ伏せにする。砕けた骨を無理に動かさないためだ。

白い針を背へ触れさせると、皮膚を刺すことなく沈んだ。細い光が背骨の破片を一つずつ拾い、元の位置へ並べていく。だが、ただ戻すだけではない。欠けた部分には竜骨と同じしなやかな白材が補われ、神経の一本一本まで正しく通された。

エレナの足指が動く。

次に膝が曲がる。彼女は寝台の縁をつかみ、自分の力で立ち上がった。

院長が慌てて支えようとするが、エレナはその手を払う。

「価値のない患者は、あなたの治療院を使わない」

一歩、二歩。三歩目でよろめいたが、ネヴィは先回りして抱えず、差し出された姉の手だけを握った。剣を持たなくても、その歩みだけで廊下の兵士たちが道を開けた。

城主が駆けつけ、ネヴィへ褒賞を尋ねる。

「姉が守った城で、負傷者が財布の重さで捨てられない治療院を」

院長の徽章が外され、ネヴィの掌へ置かれた。

白い針は姉の背で光になり、傷跡さえ残さず消える。

【骨竜限定SSR《竜骨の継ぎ針》――脊髄完全再生、世界初成功】