アイスを割る音
二本に割れるアイスを、私たちはいつもきれいに半分にできた。
その日は、真ん中から大きくずれた。
長いほうを親友が持ち、短いほうが私に残った。
「交換する?」
「いい」
声が冷たくなった。
原因はアイスではない。
昼休み、親友が私の好きな人と二人で話していた。進路相談だったと聞いたが、笑い合う姿が頭から離れなかった。
「何か怒ってる?」
駅前のベンチで親友が聞いた。
「別に」
「その言い方、怒ってる」
「長いほう取ったから」
「交換するって言った」
「そういうことじゃない」
言った瞬間、親友の顔が変わった。
「見てたんだ、昼」
「見える場所で話してたから」
「だったら来ればよかった」
「邪魔でしょ」
「何に?」
親友は、本当に分かっていないようだった。
私は好きな人の名前を出した。
「あなたも好きなの?」
親友は一秒黙り、それから笑った。
「違う。あの人、あなたの誕生日プレゼント相談してきた」
短いアイスが手の中で溶けた。
「え」
「美術部の展示、一緒に見に行きたいけど、誘い方分からないって」
「何それ」
「私も何それって思った」
恥ずかしさと安心が一気に来て、泣きそうになった。
親友は長いほうを私へ差し出した。
「交換する?」
「もう溶けてる」
「私のも」
二つとも青い滴が指を伝っていた。
「疑ってごめん」
「先に聞いて」
「聞けなかった」
「じゃあ、怒る前にアイス割って」
「何の儀式?」
「音が鳴ったら話す合図」
親友は新しいアイスを買ってきた。
今度は私が持ち、二人で左右へ引いた。
ぱきん、ときれいな音がした。
同じ長さに割れた。
「で、展示行くの?」
「誘われたら」
「今日、連絡来るよ」
「どうして知ってるの」
「相談されたから」
その夜、本当にメッセージが来た。
私は返事を送る前に、親友へ画面を見せた。
『行ってこい』と一行だけ返ってきた。
翌週、展示を見た帰りに三人でアイスを買った。
二本入りを二つ。
一本だけ余った。
親友がそれを持ち上げた。
「次に疑った人が一本食べる罰」
私は笑った。
短いほうを押しつけられた日の苦さは、同じ音で少しだけほどけた。