オレンジ色の不合格
合格発表の日、私だけ番号がなかった。
隣では、親友が自分の番号を見つけていた。
掲示板の前は歓声と泣き声でいっぱいだった。親友は喜びかけて、私の顔を見た。
「おめでとう」
先に言った。
「でも」
「言って。ちゃんと」
親友は小さく「受かった」と答えた。その声が、歓声より胸に響いた。
私は笑った。
帰りの電車では、二人ともほとんど話さなかった。
学校へ戻ると、進路指導室はもう閉まっていた。私たちは非常階段へ座った。
夕日が町をオレンジ色に染め、合格通知の封筒まで金色に見せていた。私の手には、何もない。
「喜んでいいよ」
私が言うと、親友の目から涙が落ちた。
「喜べない」
「私のせいにしないで」
強い声が出た。
親友は唇をかんだ。
同じ大学を目指した一年。模試では私のほうが判定がよかった。二人で上京し、同じ沿線に住む話までした。
「私、行っていいのかな」
「行くために受けたんでしょ」
「一人で?」
その一言で、私も泣いた。
夢の中ではいつも二人だった。
でも合格は、友情の団体戦ではなかった。
「行って」
私は言った。
「私も、来年行くかもしれない。別の場所へ行くかもしれない。まだ分からない」
親友は合格通知を膝へ置いた。
「置いていくみたいで嫌だ」
「置いていかれるんじゃない。私がここに止まっただけ」
「それ、同じじゃない?」
「違う。止まったら、また選べる」
言いながら、自分に聞かせていた。
夕日が沈み、二人の影が階段の壁を上っていく。親友の影は先の段、私の影は一段下。けれど輪郭は重なっていた。
帰りにコンビニで、小さなケーキを二つ買った。
一つには「合格おめでとう」と書いてもらった。
もう一つは無地。
店の前で半分ずつ交換して食べた。
春、親友は上京した。
私は地元の予備校へ通った。
毎週日曜、親友から大学の写真が届く。私は模試の結果を送り返す。
同じ場所へ行けるかは分からない。
それでも、あの日のオレンジ色の不合格は、終点ではなかった。
二人の時間割が、初めて別々になっただけだった。