カメラを切った合格者

オンラインの最終選考には候補者が四人いた。

一人だけカメラを切り、「回線不良です」と答えた。その直後、「Network Support」という外部ゲストが入室した。採用担当は、候補者の接続を支援する業者だと言う。

ケース問題が出るたび、カメラを切った候補者は数秒黙り、完璧な答えを返した。

画面上では何も起きていない。だがNetwork Supportのマイク表示が一瞬だけ緑になり、その直後に候補者が話し始める。

面接官は高得点を付け、内定候補にすると宣言した。

私は別の候補者だったが、最後の質問時間に手を挙げた。

「接続支援の方は、なぜ面接問題の共有ファイルを開いているのですか」

参加者一覧の横に、ファイル閲覧中の印が出ていた。

採用担当は誤表示だと言った。

私は監査ログを画面共有した。

Network Supportは面接開始前、質問集を三回閲覧している。招待リンクを転送したのは、カメラを切った候補者の個人メール。二人の接続IPも同じで、端末名は「居間PC」と「居間タブレット」だった。

候補者は、家族が善意で回線を見ているだけだと弁明した。

そのとき個別チャットの通知が、候補者の共有画面に一瞬映った。

《次は価格弾力性。結論から言え》

送信者はNetwork Support。

採用担当が削除済みチャットを復元すると、全問題への回答案が並んでいた。外部ゲストは就職塾の講師で、面接中に解答を送る有料サービスをしていた。

決済記録の添付も残っていた。商品名は《最終面接同伴コース》、予約時刻は選考案内が届いた十二分後。通信テスト用の会議予約には、講師が候補者の表示名を使う練習まで記録されていた。今日は設定を誤り、別タイルで入ってしまったらしい。

候補者のカメラがようやく点いた。隣室へ通じる扉の向こうで、同じ背景の講師が立ち上がるのが見えた。

採用責任者は内定予定の印を外した。

「通信障害は評価に影響しません。ですが、不正な支援は別です」

そして、私の応募番号へチェックを移した。

「指摘した候補者を、繰り上げではなく正規の首位として採用します」