不死者の村祭り

山あいのコルポ村では、収穫祭の余興に「竜の火くぐり」を行う。

今年は徴税官が連れてきた若竜マシュラが火を吐き、耐えた時間に応じて税を減らすという触れ込みだった。もちろん誰も参加できない出力に設定し、減税を求める村人を笑うための見世物である。

「代表はいないのか?」

徴税官が壇上から煽ると、雑用係の老人ペトラルが手を挙げた。村で最も長く住みながら、畑も家族も持たず、祭りでは串焼きを運ぶだけの男だ。

「俺でよければ」

村人は止めたが、ペトラルは飴林檎を片手に火くぐり台へ立った。

マシュラが面白がって小さく息を吐く。炎は老人を包み、背後の祭り旗を黒くした。

徴税官が笑い声を上げかけ、若竜が首を傾げた。

甘い匂いが消えていない。

煙が晴れる。ペトラルは飴林檎を口元へ運ぶ同じ姿勢で立ち、赤い飴の艶までそのままだった。焼けたはずの表面を、しゃり、と一口かじる。

「ぬるいな」と老人が言う。

若竜の頬が膨らんだ。

「僕はまだ本気じゃない!」

徴税官は好都合とばかりに、首輪の出力環を二段階回す。マシュラの母から継いだ火核が開き、成竜級の黄金炎が祭り台を丸ごと包んだ。村人たちは井戸の陰へ逃げ、徴税官だけが減税札を握って結果を待つ。

火が止む。

ペトラルは同じ姿勢で、二口目をかじっていた。彼の背後にいた子供たちも、屋台の干し草も燃えていない。

「昔、竜の国で火消しをしていてな。死なない身体は、こういう仕事には便利だった」

若竜は目を丸くする。老人の胸章に気づいたのだ。竜国で千件の噴火を止めた者だけが持つ、古い灰銀の印だった。

村の年寄りたちは、ようやく昔話をつなぎ合わせた。噴火の夜も、山火事の日も、最初に炎へ入り最後に戻ったのはペトラルだった。雑用係だから生き残ったのではない。皆を生かしたあと、黙って雑用へ戻っていたのだ。

徴税官は慌てて耐久計を運ばせる。

「機械で測れば化けの皮が剥がれる!」

ペトラルが片手を計測板へ置く。針は村の鐘より速く回り、減税札の束を風で吹き飛ばした。

祭り広場に響いた判定音のあと、表示窓には《測定不能》と出た。