二足ぶんの泥

山荘の周囲には、大きな長靴と小さな革靴の跡が残っていた。

夜のうちに収集家が襲われ、金庫から古い金貨が消えた。管理人は、夕方に修理へ来た大柄な作業員と、夜に道を尋ねた小柄な教師を見ている。二人の足跡は裏口と勝手口へ分かれ、山荘を挟むように続いていた。

ところが、長靴も革靴も右足だけ歩幅が少し短かった。さらに泥に混じった赤い実が、どちらの右踵にも一粒ずつ同じ深さで潰れている。別々の人間が同じ場所を踏んだにしては、位置まで重なりすぎていた。

作業員は金庫の蝶番を直して構造を知り、教師は停電中の山荘へ入り込めた。警察は共犯と見た。だが管理人が二人を見た時刻の差は十二分しかなく、山道を一周するには短すぎる。

管理人は作業員を玄関で、教師を台所の小窓越しに見ていた。どちらも顔の半分は雨具に隠れ、声は風に消えている。覚えているのは、作業員が重そうな工具袋を右肩に掛け、教師が同じ側だけ沈んだ鞄を持っていたことだった。

二人が書いた訪問票には、住所こそ違うが、雨で滲んだインクに同じ松脂が混じっていた。作業員は工具の手入れ、教師は画材に使うと言った。偶然を二つ並べれば共犯に見える。三つ並べると、一人の持ち物に見え始めた。

私は納屋で、片方だけ泥のついた大きな長靴を見つけた。中底には小さな革靴の鋲が食い込んだ痕がある。さらに革靴の踵には、長靴の内側と同じ赤い実の汁が付いていた。革靴を履いたまま長靴へ足を入れ、途中で脱いだのだ。

その夜、教師が事情聴取へ来た。私は管理人に、作業員の工具袋を持ってこさせた。教師は見る前から「中の金貨には触れていない」と口走った。工具袋の底は二重で、盗まれた金貨が収まっていた。

帽子を外すと、頭には作業員が使っていた髪を膨らませる網が巻かれていた。肩幅を作る革帯も上着の下にある。

二足の跡が山荘を挟んでいたのは、二人が逃げたからではない。一人が途中で靴と姿を脱ぎ、反対側から別人として戻ったからだった。

雪のない泥道に、共犯者の足跡は一つもなかった。