余白のある招待状

美琴の招待状には、薄い水色の余白が多かった。

友人の伽耶が選んだのは、装飾の少ない紙だった。中央に二人の名前、その下に日付。余白を見るたび、美琴はそこへ自分の未来を書かなくてはいけない気がした。

二十九歳の誕生日まで、あと二週間。

披露宴で同じテーブルになった友人は、妊娠中だった。別の友人は、「子どもは考えてない」と軽やかに言った。伽耶はお色直しの途中、美琴へ「うちはすぐ欲しいかな」と笑った。

美琴はどの答えにも頷いた。自分が欲しいのかは分からなかった。

帰宅すると、机に検査クリニックの申込書があった。半年前、勢いで取り寄せたものだ。将来の選択肢を考えるための相談と検査。予約欄は空白のまま、招待状の下敷きになっていた。

知れば焦るかもしれない。知らなければ、まだ何でも選べる気がする。

スマートフォンには二件のメッセージが届いていた。

母から、〈伽耶ちゃんきれいね。あなたも身体だけは大事に。まだ先でいいけど〉

伽耶から、〈今日はありがとう。美琴がくれた花瓶、新居で使うね〉

「まだ先」という言葉が、美琴には期限にも猶予にも聞こえた。

彼女は申込書を開いた。そこには「結婚予定」「妊娠希望時期」を書く欄がある。美琴は最初の欄に「なし」、次の欄に「未定」と書いた。未定は、空白よりずっと怖かった。

予約希望日に丸をつける。結果を知っても、子どもを持つとは限らない。持たないと決めるとも限らない。恋人もいない今、答えだけを急いでいるようで滑稽かもしれない。

それでも、分からないまま安心することを、美琴はもう選ばないことにした。

申込書を封筒へ入れ、伽耶の招待状と並べる。片方には二人の名前があり、もう片方には美琴の名前しかない。

翌朝、クリニックへ電話した。受付の人は祝福も忠告もせず、空いている時間を読み上げた。

予約を確定すると、未来が増えた感じはしなかった。むしろ、逃げ道が一つ減った。

美琴はその減った分を、自分で引き受けることにした。