倉庫番の一直線

《整列士》。十二個までの小物を一直線に並べる、か」

勇者隊の弓王レグナスは、ドルヴの技能を見て笑った。

【技能:視界内の手のひら大以下の物体を、最大十二個、指定した直線上へ移す】

倉庫の瓶や食器を片づけるには便利だ。だが剣も巨岩も動かせず、生き物には効かない。ドルヴは矢筒係として、勇者隊の末席に加えられた。

七層迷宮の主は、《十二命の魔人》だった。

胸の核を射抜いても死なない。十二個の命晶を身体の外へ分け、広間の中を鳥のように飛ばしているからだ。一個でも残れば、魔人は瞬時に再生する。

レグナスは一息に七個を射抜いた。だが残り五個は柱の裏へ散り、砕けた七個もすぐ再生を始める。

「同時に十二個など不可能だ!」

魔人が笑い、黒い槍を生み出した。

十二の命晶は互いに距離を取り、同じ射線へ入らないよう自律していた。過去の討伐隊も、十一個までは壊した記録がある。最後の一個を狙う間に他が蘇り、全員が殺された。

ドルヴは床へ落ちた矢を一本拾い、弓王へ返した。

前世で製図をしていたドルヴには、動く十二の点を別々に追うより、点の方を一本の線へ揃える発想が自然だった。

「一直線なら、一射で十二個です」

「命晶は動き続けている。狙いを合わせる前に散るぞ」

「狙うのは、あなたではありません」

ドルヴは技能を発動した。

広間を飛び回っていた十二の命晶が、見えない棚へ戻されるように動いた。柱の陰から、天井から、魔人の背後から。全てが弓王の正面、一本の射線上へ並ぶ。

魔人が初めて悲鳴を上げた。

レグナスの指は、もう弦を放していた。

聖矢が第一の命晶を割り、その破片ごと第二を貫く。十二回の破裂音が、ほとんど一つに重なった。最後の命晶を抜けた矢は、そのまま魔人の眉間へ刺さる。

再生は起きなかった。

迷宮の壁が崩れ、宝座への道が開く。

レグナスは弓を下ろし、矢筒を持っていたドルヴへ向き直った。

「私は百年、矢をまっすぐ飛ばすことだけを極めた」

「知っています」

「まさか、標的の方をまっすぐにする者がいるとは思わなかった」

弓王は自分の肩にあった勇者隊の副章を外し、ドルヴへ渡した。

「倉庫番は終わりだ。これから私の射線を作れ」