写真は二十枚まで

アルバムは十二冊あった。

玲那は床に二十枚分の透明ポケットを並べた。新居へ持っていく写真は二十枚まで。父と決めた数だった。

一枚目に父が選んだのは、七五三の玲那だった。赤い着物で、両手を膝にそろえて笑っている。

「これはいい写真だ」

二枚目は入学式。三枚目はピアノの発表会。どの玲那も背筋を伸ばし、カメラの指示どおりに笑っていた。

「同じ顔ばかりじゃない?」

「お前は写真写りがよかったからな」

父は褒めたつもりだった。

玲那は十一冊目を開いた。公園のベンチで、泥だらけの靴を履いた自分が泣いている。眉を寄せ、カメラへ手を伸ばしている。その隣で、母だけが大笑いしていた。

「これを入れる」

「そんな顔のを?」

父はすぐに首を振った。

「せっかくなら、かわいいのを残せ」

「これも私だよ」

「後で見て嫌になるだろう」

写真の中の自分は、嫌だと全身で言っている。撮られることか、帰ることか、父の言葉かは分からない。それでも、きれいに笑った写真より自分に近く見えた。

玲那は泣き顔の写真を一枚目へ入れた。七五三を二枚目へずらす。

「順番まで変えるのか」

「私のアルバムだから」

「新居に置くのは俺だぞ」

玲那は手を止めた。

「じゃあ、お父さんの二十枚と、私の二十枚に分けよう」

父は困ったように、空のポケットを見た。家族の写真を一冊にまとめるつもりだったらしい。

玲那は新しいポケットをもう一組取り出した。父には父の記憶を選ばせる。自分の顔をどう残すかまで渡す必要はない。

父は七五三、入学式、発表会を自分の側へ並べた。玲那は泣き顔、眠っている横顔、画面の端に半分だけ写った母の手を選んだ。選ぶ写真が重なることもあったが、位置は違った。

十九枚目で、父が一枚差し出した。

台所で玲那が鍋を焦がし、煙の中で笑っている写真だった。

「これは、俺のほうに入れていいか」

「どうして?」

「きれいじゃないけど、俺が覚えてる顔に近い」

玲那は少し考え、頷いた。

最後の一枚は、どちらも空けたままにした。父は埋めたがったが、玲那は「今度撮ればいい」と言った。

十二冊の古いアルバムを閉じる。二十枚ずつの薄いファイルは、同じ家から別々の鞄へ入った。