北門の百杯目

ユルゲン率いる〈雪狼の牙〉がサジュを追放したのは、北門を出た直後だった。

「鍋一つ運ぶために分け前を取る寄生虫め」

一行は雪原へ進み、最初の夜を迎えた。厚い毛皮も、火属性の護符もある。だが夜半、斥候の指が動かなくなった。次に弓手の唇が紫になり、ユルゲン自身も歯の震えを止められない。

護符は外気を防いでいた。それでも身体の内側から熱が尽きていく。

サジュが毎晩配っていた脂麦のとろみ汁は、豪華でも美味でもなかった。脂麦はゆっくり分解され、眠っている間も熱を生む。さらに、彼は一杯目ではなく二杯目を日没後に出していた。夜明け前の最も寒い時刻へ、消化の山を合わせるためだ。

ユルゲンたちは鍋の重さしか見なかった。中に翌朝までの体温が入っているとは思わなかった。

火魔術師が炎を強めても、眠れば火から離れた手足から冷えていく。ユルゲンは脂麦を生で飲み込ませたが、固い殻は消化されず、そのまま吐き出された。弱火で長く煮る時間まで含めて、鍋は夜明けまで燃える第二の焚き火だった。

同じ夜、サジュは北門の避難小屋で百杯目の汁を注いでいた。吹雪で足止めされた旅人、門番、荷運び人。身分に関係なく、全員へ同じ椀を渡す。

夜明け、凍傷になった者は一人もいなかった。

門衛長は湯気で曇った眼鏡を拭き、サジュへ鍵束を差し出した。

「この小屋を冬季救護所にする。食料の仕入れも配給時刻も、全部あなたに任せたい」

入口には〈北門保温食監督〉の札が掛かった。かつて重いと罵られた鍋が、門の常備装備に登録された。

朝、橇に乗せられたユルゲンたちが戻ってきた。団長は毛布の中から手紙を突き出す。

「雇い直してやる。今夜までに鍋を持って来い。分け前は……半人前から一人前に上げる」

サジュは百一杯目を、凍えた門番へ渡した。

「ここでは最初から一人分として数えてもらえました」

ユルゲンが何か叫ぶ前に、サジュは救護所の鍵を受け取った。

「雪狼の牙との契約は、北門の外で追放された時点で終了しています」