十七皿目の塩

昼の社員食堂で、城戸瑞希は十七皿目のペペロンチーノを味見し、すぐに鍋を置いた。最初の皿より明らかに塩辛い。同じソース、同じポーションで作っているのに、時間が経つほど味が濃くなっていた。

食堂の入口には昼休みが短い社員たちが並び、デシャップでは番号札が次々に増えていた。味見を一皿分だけの失敗として処理すれば、列は早く進む。だが瑞希は、最初の皿から十七皿目までの変化に原因があると考えた。

「ソースの計量を間違えた?」

盛り付け係が聞いた。瑞希はデシャップに並ぶ皿ではなく、パスタボイラーの水面を見た。朝の印より三センチ低い。湯は濁り、沸騰する泡が小さくなっている。

通常は麺を上げるたび自動で給水される。だが給水口には石灰質の白いかけらが挟まり、水が細くしか出ていなかった。湯だけが蒸発し、最初に入れた塩が鍋の中で濃縮されていたのだ。ソースを薄めても、麺そのものが塩を吸っている。

提供済みの皿については、客席係に苦情の有無を確認してもらった。最初の範囲は許容できる味で、境目は味見した皿より後だと絞れた。瑞希は廃棄する十七皿を一か所へ集め、忙しさで誰かが再び流さないようラップではなく赤い札を立てた。

瑞希はそのボイラーを止め、直前の味見以降に茹でた十七皿を出さないよう札を置いた。隣の正常なボイラーへ注文を移し、麺の投入間隔を広げる。厨房の速度は落ちるが、塩辛い皿を混ぜて流せば、どこまでが不良か分からなくなる。

給水口を勝手に分解せず、設備担当へ連絡した。待つ間は一度に茹でる量を減らし、湯量の印を五分ごとに確認する。待たせた客には小さなサラダを先に出した。急ぐために不良を混ぜるのではなく、待てる形を客席にも作った。

十三分遅れで最後の社員へ皿が渡った。

「十七皿、もったいなかったですね」

係が言うと、瑞希は廃棄記録に数を書いた。「残していたら、次の百皿まで分からなくなった」

昼営業の札を裏返すと、設備担当が工具箱を持って入ってきた。夕食のポーションは、すでに冷蔵庫で待っていた。