十四本の蝋燭を消した屋根
宝石研磨組合の工房では、昼でも蝋燭を十四本灯していた。窓が低く、隣家の壁しか見えない。職人は影で切断線を誤り、一月に宝石六十個を割っていた。
元工場設計士のルーメは、屋根の高い位置を指した。
「壁が塞がれているなら、空から光を取ります」
彼女は屋根の一部を持ち上げ、北向きの高窓を連続して設けた。直射日光ではなく、空の均一な光だけを作業台へ落とすハイサイドライトだ。工事は一晩で一列だけ完成した。
翌朝、親方がいつものように蝋燭へ火をつけると、ルーメが一本ずつ吹き消した。
十四本すべて消えても、作業台の銀線は端まで見えた。手の影が刃先を隠さず、赤石と橙石の色も混ざらない。
最も目の悪い老職人が、欠けやすい月雫石を切った。十五分後、厚さ二ミリの板が十枚、同じ幅で並ぶ。普段なら十枚中三枚は割れる仕事だった。午前中に四十個を加工し、失敗は一個だけ。蝋燭の煤で曇っていた天井も白いままだった。
組合長は、割れた宝石の損失表と、屋根工事の見積もりを比べた。改修費は十日分の損失より安い。さらに蝋燭代が一日銀貨二十八枚消える。
彼は競合建築家の豪華な窓案を机から払い落とした。
「工房は全部で九棟ある。全作業台へ同じ空の光を落としてくれ」
工房では、失敗した職人が宝石代を給金から引かれていた。若い研磨師は今月だけで三か月分の借金を負い、手を震わせていた。高窓の下で同じ石を渡されると、彼の刃は線から一度も外れなかった。
正午になっても直射日光は作業台へ差し込まず、明るさだけが保たれた。雲が通っても影の向きが急に変わらない。午後の検品では、百二十個中の不良が二個。前日の二十七個から激減した。組合長は借金帳を見て、照明のせいで生じた破損分を職人へ負わせていたと悟る。若い研磨師の赤字はその場で消され、浮いた蝋燭代から全員の手当まで出せることになった。
組合長はルーメの見習い札を金の職人札へ交換した。
「組合専属建築士として、今日から正式に雇う」