半月の輪刃
砂岩宮の中庭で、ジャイナート・ラオは半分に割れた輪刃を磨いていた。
銀の円環は、死んだ王子の武器だった。暗殺の夜、刃は石柱に当たり、半月になった。王子を守っていたジャイナートとヴィレン・サクは、互いを逃亡者と呼び、七年を浪人として生きた。ジャイナートは隊商の護衛、ヴィレンは闘技場の剣士となった。王子の妹は二人へ同じ額の金を送り続け、どちらが先に偽名を捨てて戻るか見ていた。二人とも金だけ受け取り、今夜まで名を名乗らなかった。
今夜、王子の妹が挙兵する。親衛隊へ戻れるのは、決闘で立った一人だけだった。
二人は曲刀を抜き、半月の輪刃を間の敷石へ置いた。中庭の四隅には親衛兵が弓を構える。逃げれば射られる。相討ちなら、妹は二人の首を王子の墓へ供えるつもりだった。七年待った者の慈悲は、刃より薄かった。中庭には王子の血を洗った溝が、今も黒く残っていた。ヴィレンはそこを踏まずに構えた。罪悪感なのか、証拠を避ける癖なのか、ジャイナートにはまだ分からない。
「王子を刺した短剣は、右脇から入った」
ジャイナートが言う。
「今さら弁明か」
ヴィレンは左足を前へ出した。右手の曲刀だけを見せ、腰布は厚く巻いている。
最初の斬り合いで、ジャイナートはわざと半月の輪刃を蹴った。磨かれた内側が月光を拾い、敷石の上で鏡になる。
そこに、ヴィレンの腰布の下が映った。
左腰に短い柄。七年前の傷口へ届く逆手の位置だった。
ヴィレンも反射に気づき、隠し短剣を抜いた。右の曲刀を囮にし、左手で懐へ入る。王子を殺したときと同じ動きだった。
ジャイナートはその一手を待っていた。曲刀を捨て、ヴィレンの左手首を両腕で挟む。半歩回り、肘を折る。短剣が落ちた。
ジャイナートは拾った刃を、ヴィレンの胸へ向けた。
「証拠にならん」
ヴィレンが言った。
「妹君にはなる。俺には、七年分だ」
刃は刺さなかった。死体は口を閉ざす。生きた裏切り者の方が、挙兵には役に立つ。
王子の妹は半月の輪刃を拾い、欠けた円を指でなぞった。そして親衛兵へ顎を上げた。
砂岩宮の上に、黄の王旗が上がった。