友情の持分
大学時代の仲良し三人が作った会社から、私は外された。
企画の相談に乗り、最初の打ち合わせ代まで払った私に、創業メンバーの席がない。三人が学生の頃に口にしたアイデアを、私は日時つきで記録してきた。誰の思いつきでも、価値を見抜いて保存した人に権利がある。
送られてきた事業計画書には、私の名前だけが黒く塗られていた。会社名も、私が提案したものとは違う。けれど資料の余白やページ番号は私の形式に似ていた。育て方を教わっておいて、親だけ消したようなものだ。私は念のため、三人へ貸した金額を一円単位で表にしている。コーヒー代四百八十円も、資料印刷代百二十円も、友情を曖昧にしないためだ。
さらに不可解なのは、三人が同じ日に振り込んできたことだった。元金だけでなく、私が独自に計算した相談料や時間外料金まで入っていた。振込名義の末尾には三人とも《完済》と付けている。友情にそんな言葉を使う冷たさが理解できない。借りを返して縁まで切るつもりなのだろう。
私は登記前の会議へ入り、自分が作った契約書を机に置いた。
「出資者を外せると思ってるの?」
友人の郁は、弁護士の印がある別の書類を出した。私が渡した契約書には、少額の立替えと引き換えに、三人の企画、収益、退職後の成果まで私へ帰属させる条項があった。
説明はした。小さな字でも、読まなかったのは彼女たちだ。採用面接に口を出し、交際相手が事業に不向きなら別れを勧めたのも、投資を守るためだった。郁が別の会社へ行こうとした時は、学生時代の借用書を両親へ送った。迷いを止めるには、逃げ道を減らすのが早い。
「友達を株みたいに持てると思ってた?」
三人は全額を返し、私が触れた企画を捨て、新しい会社を作るという。私は被害者なのに、会議室のカードキーまで回収された。
帰宅後、精算表を確認した。
郁が立て替えた切手代との差額、三十七円だけがまだ残っている。
私はその行に、《関係継続中》と丸をつけた。