同じケーキを分ける目印
母と息子は同じ誕生日だった。
四十七歳と十七歳。
家族は大きなケーキへ、数字のろうそくを二組立てた。
母が息子の「17」を、息子が母の「47」を、ふざけて同時に吹き消した。
ケーキの最後の一切れがなくなるまで、二人の体が入れ替わった。
息子の体になった母は、学校へ行った。
授業中、息子の足が止まらず震え、廊下の音で頭が痛んだ。
担任は「集中しなさい」と言う。
友人からは進路の返信が何件も来る。
息子は怠けて部屋へこもるのではなく、皆が当然決められる未来を、自分だけ選べないことに疲れていた。
母の体になった息子は、職場へ行った。
若い同僚から機械の操作をゆっくり説明され、
「無理しなくていいですよ」
と仕事を取り上げられた。
一方、上司からは家庭の事情を理由に残業を頼まれた。
母が家で細かく指示するのは、職場で判断する場を減らされ、家だけは自分が役に立つ場所だと思いたかったからかもしれない。
夕食で二人は向かい合った。
家族は入れ替わりを信じず、母の体の息子へ料理を任せ、息子の体の母へ進路を尋ねた。
「今、決められない」
母は息子の声で初めて言った。
「決めないと困るでしょう」
息子が母の口癖を返し、すぐに顔をしかめた。
「これ、言われると苦しいね」
母も、
「役に立ってるって言ってほしかった」
と話した。
息子は笑わず、
「料理しなくても、お母さんだけど」
と答えた。
ケーキが一切れ残っていた。
二人は戻るのを急がず、半分ずつ食べた。
最後の一口がなくなると元へ戻った。
翌日、母は職場で新しい担当を希望した。
年齢を理由に断られかけたが、必要な研修を尋ねた。
息子は進路を一つに絞らず、休学を含めて相談室へ話した。
誕生日の写真には、四十七歳の母と十七歳の息子が写っている。
二人とも笑顔がぎこちない。
けれど数字のろうそくは、互いの前へ置かれていた。
年齢は相手の答えを先に知っている証明ではない。
違う年を生きる二人が、同じケーキを少しずつ分ける目印だった。