名前を焼いた砂糖菓子
誰かの名を砂糖へ焼き込み、別の者が食べれば、その名に結びついた悲しみをすべて引き受けられる。ただし、名の持ち主は食べた者を忘れる。
菓子職人カシアナは、薄い飴板へベンノの名を書いた。
火を当てると文字が琥珀色に溶け、台所に焦げた蜂蜜の匂いが満ちる。隣室ではベンノが、亡き妻の靴を抱いて眠っていた。
一年間、彼は毎週店へ来た。最初は妻が好きだった菓子を買い、次に妻が嫌いだった菓子を買い、やがて何も選べず椅子に座るだけになった。
カシアナは話を聞いた。妻が笑うと片方だけえくぼが出たこと。最後の朝、くだらないことで口論したこと。もう一度誰かを好きになりたいのに、それを考えるだけで裏切りに思えること。
「悲しみを消す菓子があるなら、食べたい?」
ある夜、彼女が尋ねると、ベンノは首を振った。
「忘れたくはない。苦しいだけで」
だから彼に食べさせるのではない。彼の名を焼いた菓子を、カシアナが食べる。悲しみは彼の記憶に残るが、胸を締める重さだけが彼女へ移る。
代わりに彼は、カシアナを忘れる。
毎週座った窓辺も、差し出された温かい茶も、彼女にだけ話した醜い後悔も。最近ようやく、閉店後に二人で歩くようになったことも。
飴板が冷えた。
ベンノが隣室から出てくる。「また眠ってしまった。ごめん」
「いいの。最後に一つ聞いてもいい?」
「何でも」
「私と会えて、少しは楽になった?」
彼は困ったように笑った。
「少しどころじゃない。あなたがいなかったら、たぶん今も朝を嫌ってた」
その言葉を覚えていられるのは、食べる側だけだ。
カシアナは飴を割った。半分だけなら、忘れられるのも半分で済むかもしれない。そんな都合のよい抜け道はないと分かっている。
一片を舌へ置く。
甘さの直後、胸へ冷たい波が押し寄せた。葬列の雨、空の寝台、言えなかった謝罪。ベンノの一年分の悲しみが、骨の内側へ満ちていく。
向かいの彼は、ゆっくり眉を寄せた。
「失礼ですが」
カシアナは残りの飴を握りしめる。
「ここは……菓子屋ですよね。あなたは店主さんですか?」
彼の声には、久しぶりに朝へ向かえる軽さがあった。