告解庫の番人

火の手が告解庫へ迫っていた。

書記レナクは、棚に並ぶ黒い記憶筒を見上げた。信徒の告解を声ごと封じたものだ。教会はそれを脅迫に使い、商人から金を取り、役人を操り、都合の悪い告発者を消してきた。

筒の中身は、耳へ当てなければ判別できない。

一つの秘密を聞くたび、その秘密が聞き手の個人的な記憶一つを押し出す。二度と戻らない。だから番人たちは、幼い孤児から選ばれた。

レナクは、消えた子どもたちの行方を示す筒を探していた。

一つ目。

財務司祭が献金を横流しした声。代わりに、母の髪の色が消える。

二つ目。

院長が判事へ賄賂を渡した日付。代わりに、初めて文字を読めた朝が消える。

三つ目、四つ目。

妻と食べた最後の夕食。雨の日に交わした約束。大切な記憶ほど先に押し出され、他人の罪が頭の中へ整然と並んだ。

炎が扉の隙間から舌を出す。司教リオードは、告解庫ごと証拠を焼くつもりだ。

棚の奥に、子どもの名を書いた筒を見つけた。

聞く。

地下工房へ売った人数、骨を聖遺物へ加工した職人、命令した者の名。情報が流れ込むと同時に、レナクは妻の顔を失った。結婚していた事実だけが残り、誰と暮らしていたのか分からない。

彼は筒を抱え、放送管の主弁へ走った。大聖堂の説教台につながる管だ。

リオードが兵を連れて現れる。

「聞いたな。なら、お前も何者か分からなくしてやる」

レナクは答えず、筒を主弁へ差し込んだ。

大聖堂中へ、司教たち自身の声が響いた。金額、殺した者の名、埋めた場所。礼拝中の群衆が扉を閉ざし、逃げようとした聖職者を取り囲む。

リオードはレナクへ斬りかかった。彼は最後の筒を耳へ当てる。司教が自分の兄を毒殺した告解だった。

代わりに、自分の名が消えた。

それでも秘密を放送管へ流す。リオードの剣が止まり、近衛兵が彼を拘束した。

火は消し止められ、地下工房から生存者が見つかった。

夜、ひとりの女が告解庫へ駆け込み、レナクだった男を抱きしめた。

「帰ってきて。私よ」

男は彼女の肩越しに棚番号を見た。頭の中には三百十二件の罪と、二十七人の隠し口座がある。だが抱いている女の名も、自分がなぜ泣いているのかも分からない。

「私は誰ですか」

女が彼の名を呼ぶ。

音は聞こえたが、自分へ結びつかなかった。

男は胸の札を裏返し、そこに残った唯一の識別を読んだ。

「告解庫、棚Cの十七番」

教会の秘密はすべて人々へ戻った。

番人だけが、自分の人生を置く棚を見つけられなかった。