喉に棲む声

ミオスの口を塞いだ革帯は、内側から膨らんでいた。

彼の声を聞いた兵は骨の魔物になる。戦闘の最中に呪声を浴びたミオスは、まだ一言も発していない。それでも喉の奥では、他人の声が何十人分も囁き、帯を切ろうとしていた。

夜明けまで声を別の器へ移せば助かる。方法は、口から呪声を吸い取り、朝日が差すまで一音も漏らさず喉に閉じ込めること。器になった者の声がどうなるかは、誰も言わなかった。

ケデルは帯の留め金へ手をかけた。

ミオスが激しく首を振る。

「黙っていろ。今だけは得意だろ」

冗談に反応して彼の目が細くなる。ケデルは帯を外し、開いた口へ自分の口を近づけた。

冷たい息が流れ込んだ。

最初はミオス自身の声だった。次に死んだ兵たちの絶叫、祈り、母を呼ぶ声が喉へなだれ込む。ケデルの首が何倍にも膨らみ、皮膚の下で言葉が虫のように這った。

帯を自分の口へ巻く。

朝まで二人は向かい合って座った。ミオスの顔から灰色の鱗が落ちていく一方、ケデルの喉には縦の亀裂が現れた。帯の下で何度も口が勝手に開き、歯が革を噛んだ。ケデルは両手で顎を押さえたまま、窓の黒さだけを見つめる。ミオスは声を失った身振りで、昔覚えた手話を使い、「ここにいる」と繰り返した。

中の声が誘惑する。

——苦しいと言え。

——助けを呼べ。

——たった一音でよい。

ケデルは舌を噛み、血を飲み込んだ。声はその味を喜び、喉の亀裂に歯を生やした。

窓の隙間が白んだ。最初の朝日がミオスの額へ触れる。彼の鱗はすべて消え、人の唇が震えた。

「ケデル」

名を呼ばれた瞬間、呪いは終わった。

ケデルは帯を外した。無事だと答えようと口を開く。しかし口からは息しか出ない。

代わりに喉の亀裂が大きく割れた。そこには小さな歯と黒い舌があり、死んだ兵たちの声を重ねて言った。

「ミオス」

仲間の名ではない響きだった。獲物を選ぶ声だった。

ミオスが後ずさる。ケデルは両手で喉を塞いだが、第二の口は指の間から笑い続けた。彼自身の声だけは、朝日の中へ抜けたきり、二度と戻らなかった。