墓守小屋の朝支度

戦没者墓地の物置には、戦で親を失ったグレンたちが住み着いていた。町の人は供え物を置いたが、子どもが墓地にいると縁起が悪いと言い、夜になると門を閉めた。

町政官エステラは、空いている墓守小屋を住居へ直すと決めた。ただし墓への寄付金には手を付けなかった。

「死者への金で生者を養うのは嫌だ」

遺族の一人が言う。

「だから、墓地前の花市の場所代を使う。店一間につき一日銅貨二枚。売れない冬季は一枚。使途は墓道の維持と小屋の修繕を半分ずつ。店の位置と徴収額を毎朝掲示し、町営花店も同率にする」

花市の大店は、寄付者名を小屋の正面へ彫ることを条件に多額の銀貨を申し出た。エステラは断り、規則どおりの場所代だけを受け取った。

「この家の玄関に、他人の恩を返し続ける札は掛けない」

それを聞いた小さな露店主が、胸を張って二枚を箱へ入れた。

花商たちは計算し、墓道が整えば客も歩きやすいと納得した。石工は割れた墓石の修理で出た端材を炉台にし、蝋燭屋は短くなった蝋を集めて明かりを作った。遺族たちも、子どもを追い払う代わりに毛布を運んだ。

グレンは一つだけ求めた。

「墓守の仕事を住む条件にしないで」

夜の墓地を怖がる子もいる。エステラは頷き、手伝いは希望者へ賃金を払うと規則に書いた。するとグレンは、自分から朝の花殻集めを引き受けた。義務でなくなった途端、それは彼が選べる仕事になった。

子どもたちは壁色を自分たちで選び、墓石と同じ灰色ではなく、若草色に塗った。完成した小屋には四つの寝室と、門の外へ出られる裏口ができた。門が閉まっても、子どもたちは閉じ込められない。裏口の鍵は全員が持った。

入居の翌朝、遺族たちが墓参りに来ると、小屋の煙突から白い煙が上がっていた。窓辺には洗った杯が並び、グレンが焼いた薄パンの匂いが漂う。

墓地の門に、新しい開門札が掛けられた。

――日の出より。墓参りの方も、朝食の方もどうぞ。

死者の隣で、生きる家の朝が始まった。