孔雀庭園の借り物の笛

夏宮の園遊会で、ナディエラ・ポルタは皇后の孔雀を暴れさせた罪に問われた。

婚約者サルヴィオ・クレッサが、踏み荒らされた花壇を指す。

「彼女が訓練笛を吹き、孔雀を皇后陛下へけしかけた。婚約を破棄する!」

孔雀たちは噴水の縁で何食わぬ顔をしている。ナディエラは笑いそうになるのをこらえ、飼育道具の貸出契約を取り出した。

「訓練笛は一つしかありません。借りた者の声紋を記録します」

契約を笛へ近づけると、最後の借用者名が甲高く読み上げられた。

〈サルヴィオ・クレッサ。借用時刻、正午〉

証拠は笛一本。彼が「彼女に渡した」と叫んでも、返却欄は空白のままだった。

ナディエラは皇后の孔雀を三年世話し、それぞれの好物も機嫌の悪い時の歩き方も知っていた。笛を乱暴に吹けば、孔雀は人ではなく赤い飾りへ突進する。今日サルヴィオが選んだ衣装には、皇后席と同じ赤い羽根がついていた。結果、彼自身が庭を逃げ回り、花壇だけが犠牲になったのだ。笑い話で済みそうな騒ぎを、彼は彼女の追放に使った。ナディエラは孔雀よりも、失敗を認めない男の方がよほど扱いにくいと悟った。

「お前が吹けと命じたのだ!」

「では最初の告発を、命令した罪へ変えるのですか? 一つに決めてくださいませ」

会場にこらえきれない笑いが広がる。サルヴィオは耳まで赤くした。

「冗談だ。婚約破棄は撤回する。孔雀ごときで騒ぐな」

「ごとき、と仰るなら、なぜ私の人生を壊そうとしたのでしょう」

皇室庭園を管理する大公オルフェウス・オルテガが一人だけ歩み出た。肩には一羽の孔雀が勝手に乗っている。

「庭園監督官が空席だ。動物より言い訳の多い人間を扱える方に来てほしい」

ナディエラは思わず笑った。

「大公閣下も、扱いに含まれます?」

「最も手の掛かる一羽として数えてくれ」

彼は孔雀を追い払わず、空いた方の手を差し出す。サルヴィオが彼女の名を怒鳴った。

ナディエラは訓練笛を彼の胸へ返し、自分から背を向けた。孔雀の羽がきらめく下で、大公の差し出した手を取った。