山小屋では一人増える

吹雪の山小屋へ、登山者五人が逃げ込んだ。

薄葉玖珠が人数を数える。

「一、二、三、四、五、六」

全員が黙った。

リーダーがもう一度数える。

「私、玖珠、夫婦二人、学生一人……五人だ」

玖珠は隅を指す。

「でも、あそこに一人座ってる」

毛布をかぶった人影が、暖炉の横にあった。

学生が震える。

「遭難者の霊だ」

夫が妻を見る。

「君の後ろから入った」

妻は夫を指す。

「あなたが扉を開けた時でしょう」

リーダーは玖珠へ言う。

「最初に六人と数えた人が連れてきたのでは」

「人数を数えると召喚される仕組み?」

人影は動かない。

リーダーが声をかける。

「どちらのパーティーですか」

返事はない。

学生が言う。

「死者は所属を答えない」

妻は小声になる。

「誰か一人、身代わりを求めてる」

夫は学生を見る。

「一番若い者から」

「将来がある人を差し出すんですか」

「では一番年上」

リーダーが怒る。

「年齢を聞かずに決めるな」

リーダーは宿帳を開いた。

「昨夜の利用者は六名。名前が一つ滲んでいる」

学生が声を落とす。

「その人が戻れなかった?」

妻は夫へ寄る。

「あなた、入口で誰かに道を譲ってたよね」

「ザックだ」

「返事しなかった」

「ザックだからな」

「最初から人ではないものを数えすぎよ」

五人は互いの荷物を確認した。

「玖珠さんのザックに六人分の食料が」

「予備よ」

「夫婦のテントは二人用」

「当たり前」

「学生の名簿に欠席者が一人」

「来なかった友達です」

「欠席者の霊が追ってきた?」

「生きて家にいます!」

風で毛布が少し動いた。

全員が出口へ下がる。

「誰がめくる?」

「リーダー」

「発見者」

「夫婦は二票あるから多数決で有利」

「投票制度を持ち込むな!」

玖珠が意を決し、ストックで毛布を持ち上げた。

中から現れたのは、人命救助訓練用のマネキンだった。山小屋の管理人が置いたもので、胸に〈要救助者・六号〉とある。

学生が札を読む。

「六号だから六人と数えた?」

玖珠はうなずいた。

「暗い中で番号を人の数に入れたみたい」

そこへ管理人が到着した。

「六号を見つけたなら、訓練に参加しますか」

五人は声をそろえた。

「もう十分救助されました」

増えた一人は、人間ですらなかった。