抱いた重さ

パルメがニムを引き取ったのは、姉夫婦が亡くなった雨の夜だった。

まだ二十四歳で、自分の食事さえ忘れる仕立屋だった。母親になれるはずがないと思った。それでも駅の待合室で、三歳のニムが黙って両手を伸ばしたから、抱き上げた。

それからパルメは、服の寸法より先に子どもの靴の大きさを覚え、納期より学校の休みを気にするようになった。夕食を焦がし、髪を左右違う高さに結び、何度も姉ならどうしたかと考えた。ニムは一度も彼女を母と呼ばず、パルメも呼ばせようとしなかった。それで十分だと思っていた。

小さな体は濡れた毛布のように重く、首に回った腕だけが熱かった。

七年後、ニムは眠り病にかかった。

目を閉じたまま、日ごと体温が下がる。毎朝パルメは制服を枕元へ置き、学校であったことを話した。返事のない部屋で、袖丈だけが昨日より長く見えた。治す薬があると聞き、パルメは白い薬棚の店へ駆けた。

「この子を起こしてください」

店主は琥珀色の薬を出した。

「子どもの病を治す代金は、その子を初めて抱いた記憶」

パルメは瓶を受け取れなかった。

あの夜を忘れれば、自分がなぜ母親の役を引き受けたのか、始まりが消える。ニムの重さに驚きながら、絶対に落とさないと決めた瞬間。家族になるという言葉より先に、腕が答えを出した瞬間だった。

「別の思い出では駄目ですか」

「初めて抱いた記憶だけが、眠っている子をこちら側へ引く」

寝台のニムが浅く息をする。細い指には、パルメが端切れで作った指人形が握られていた。

母親になれた証拠を守って、子どもを失うことはできない。

パルメは薬瓶へ口づけた。

雨の駅が遠ざかる。伸ばされた両手が消える。濡れた毛布の重さが、腕の中から抜け落ちた。

薬を飲ませると、ニムの頬へゆっくり色が戻った。

瞼が開く。

「パルメ。抱っこ」

なぜこの子を初めて抱いたのか、もう分からない。

それでも両腕は迷わず伸びた。

抱き上げた体は、初めて知るはずなのに、ちょうどよく収まった。